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<6>飯沢耕太郎所蔵の写真集5千冊が並ぶ食堂

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 写真集と食堂――。まったく接点のなさそうなキーワードだが、店を訪れてみると、その奇妙な組み合わせの何とも言えない心地よさがある。

 2014年2月にオープンしたばかりの「写真集食堂 めぐたま」を切り盛りするのは、写真評論家の飯沢耕太郎さん(60)、コミュニケーションアーティストのときたまさん(60)、かつて「上野広小路めぐり」というごはん屋さんを営んでいた、おかどめぐみこさん(66)の3人。

「飯沢さんが写真評論家として30年以上もの活動で集めた写真集がいっぱいあるんだけど、誰にも見られないなんてもったいない! それに、おかどさんとは以前から仲良しで、一緒にいろんなイベントをやってきました。おいしいご飯が食べられて、イベントもできる空間が作りたかったんです」

 そう、ときたまさんは言う。そんな希望を詰め込む“箱”となったのは、建築家の村井正さんが設計した「エアロハウス」。箱形で柱のない広い空間を作れる新工法の木造建築だ。内装は、ザ・ペニンシュラ東京の内装デザインも手掛けた橋本夕紀夫さんが担当した。

 店の壁一面には約5千冊の写真集が収められており、19世紀から現代まで写真の歴史をたどるように写真家ごとに並べられ、自由に閲覧できる。なかには希少な初版本や自費出版の写真集もあるが、飯沢さんたちは意に介さない。

「みなさん丁寧に扱ってくれますし、そもそも写真集は多くの人が手に取って見てもらうもの。ぼろぼろになってしまうこともありますが、飯沢さんが白いテープで楽しそうに補修していますよ」と、ときたまさんは笑う。

 写真集は誰でも楽しむことができるもの。世界中のさまざまな風景や自然、岩合光昭さんの猫や宮沢りえさんのヌード、あるいは昔の日本の街角……。

「とにかく何でもあるから、どんな人が来てもきっと好きな写真が見つかるはず。ここには小さな世界が詰まっているんです」

 一方の食堂も、たまらなく魅力的だ。おかどさんの料理のテーマは“日本のおうちごはん”。丁寧に出汁(だし)を取り、手作りの味噌を使い、旬の食材を採り入れた品々はまさに「おふくろの味!」と叫びたくなるものばかり。昼はランチセット、昼下がりはケーキや甘味などのスイーツ、夜は酒の肴にぴったりの一品料理や鍋などを用意している。

「きょうは1日ここで過ごします!」と宣言し、心ゆくまで写真集を眺め、ランチや夕飯を食べて帰る客がいるのも納得だ。

 写真集と食堂。ちょっと奇妙な組み合わせだけど、なんて温かで幸せなことよ!

(次回は2015年1月8日に掲載する予定です)

■オススメの3冊

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『センチメンタルな旅』(荒木経惟)
新婚旅行での“愛”を記録し、「私写真家宣言」をした、荒木経惟の初の写真集。1000部限定。「写真家とモデル(この場合は荒木経惟さんと奥さんの陽子さん)との関係のあり方を、普遍的な男と女の「物語」として提示した名作です」

『SELF AND OTHERS』(牛腸茂雄)
36歳で夭逝した写真家の代表作。友人、家族、子供たちのさりげないポートレイトの数々。「何気ない『記念写真』が並んでいるようですが、60枚を見続けていくと、人間の存在の不思議さ、怖さがじわじわと滲みだしてきます」

『流れの歌』(鈴木清)
炭鉱夫、女工、映写技師、プロレスラー、旅芸人など、昭和の原風景を追った写真集。「鈴木清は生涯に出版した8冊の写真集のうち7冊が自費出版。その最初の1冊である本書では、自分と家族の記憶をたどり直そうとしています」

「写真家自身が写真集を自費出版する場合、自分の思った通りに作れるし、それ自体が作品とも言えます。写真の歴史を振り返る時、自費出版の写真集というのは大きな意味を持ってるので、この3冊を選んでみました」(飯沢さん) ※いずれも店内で閲覧できる

(写真 石野明子)

    ◇

写真集食堂めぐたま
渋谷区東3-2-7
03-6805-1838
http://megutama.com/

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PROFILE

吉川明子

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体に週刊朝日、アサヒカメラ(「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、婦人公論、BRUTUS、mi-molletなど。
https://www.instagram.com/a_yoshikawa0227/
https://note.mu/akikoyoshikawa

<5>下町商店街で「運命の1冊」を注文する

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<7>手に取ることのできる本というアートを

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