花のない花屋

朝起きられずに苦しんでいる娘に

  

〈依頼人プロフィール〉
渡部貴子さん(仮名) 45歳 女性
岡山県在住
団体職員

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長女は小学校6年生から1年間、毎朝5時起きで勉強を頑張り、希望していた中学校に合格しました。入学してからは、「勉強が大変!」と言いながらも、吹奏楽部に入って毎日楽しそうに学校へ通っていました。

ところが半年もたたないうちに、朝起きられず夜は寝られないという状態に。体の調節をする器官がうまく働かず、無理に体を動かそうとすると目まいや頭痛がひどくなってしまうのです。

病院へ行くと「起立性調節障害」との診断を受けました。専門医にかかっていますが、思春期特有の病気で確たる治療法はなく、服薬と養生法を守ることで症状を緩和するしかないとのこと。成長とともに症状は消えるそうですが、その時期がいつ来るかは人それぞれだというのです。

今も、朝は自力で起きることができません。さまざまな不快症状のために、体調がよくても登校は3限目くらいから。週4日ほどしか学校へ行けません。勉強にもついていけず、ついに部活も辞めざるを得なくなりました。それでも娘は笑顔を絶やさず、「今を楽しんでいるよ、学校も楽しいよ」と言います。

娘は昔から感情を表に出すことはめったにありません。端から見ると、調子のいいときは元気なので、ついつい「本当は学校に行きたくないだけじゃないの」と言ってしって傷つけてしまったこともあります。一番つらいのは娘自身なのに……。

まだ中学生なのだから、しんどいときはしんどいと言っていいし、2人でなんとか乗り切っていこうね、と改めて娘に伝えたいと思います。そんな気持ちを込めて、頑張っている娘にご褒美(ほうび)のお花を作っていただけないでしょうか。

小学生の頃は水色や藤色が好きだったんですが、半年前くらいから赤やピンクが好きなようです。洋服や弁当箱などを選ぶときは、「ピンクが私のテーマカラーなの」と言っていました。

無意識のうちに、暖色系で元気になる色を求めているのかもしれません。ゴージャスというよりは、ほんわりほっこり、心が和むようなアレンジにしていただけると嬉しいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

娘さんのテーマカラーというピンクでまとめました。少し春の気配がしますね。

使ったのはダリア、カーネーション、スイートピー、カトレア、ラン、デンドロビウム、なでしこ、スカビオサなど。薄いピンクから濃いピンクのグラデーションを組み合わせました。

そこに、ところどころ香りのいいアスチルベやベロニカといった形の違うものを差しています。

花は生命のかたまり。見るだけで人を元気にさせる効果があります。僕は、実は都内のある産婦人科から頼まれ、3年ほど前から病院のロビーに花を飾ったりしています。ちゃんと心理的な効果もあるようです。

花を見て、少しでも元気になってくれたら。お母さんも自分を責めず、肩の力を抜いておふたりで楽しんでくださいね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

朝起きられずに苦しんでいる娘に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


花の仕事をきちんとあきらめられるように

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