花のない花屋

モンチッチのようなパワフルな母に

  

〈依頼人プロフィール〉
池内有希さん 44歳 女性
大阪府在住
会社員

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母は148cmと小柄なのにパワフルで、どこかモンチッチのようです。山椒(さんしょ)のように“小粒でピリリ”を体現しています。

私が小学生の頃までは専業主婦でしたが、父方の祖父が開いた紳士用品店を両親が継いでからは、辣腕経営者に。レディースも扱い、おしゃれなブティックに変身させました。仕事に身が入らない父を尻目に、母は新しいメーカーの開拓や仕入れのために、月に1度は東京へ。私と妹の面倒をみながら、いつもあちこち飛び回っていました。

おっちょこちょいなところもあります。電車に乗れば、棚にスイカを丸ごと置き忘れ、キキーッと止まったときに棚から落ちて大騒ぎにさせたり、東京出張では、一人お寿司屋さんに入って江戸前の寿司を楽しみ、飛行機に乗り遅れたり。いつもこちらがヒヤヒヤします。

阪神淡路大震災では、家もお店も潰れてしまいましたが、1年で立て直しました。妹と私が独立してからは、緑内障を患っていた父の視力が落ち、ほとんど失明状態に。母はひとりで商売を切り盛りしながら家事もこなしていました。

長年頑張ってはいましたが、小売業はやはり厳しい世界。数年前、知人に「クリーニング屋やらへん?」と持ちかけられると、その半年後にはブティックを畳み、2012年の春にクリーニング屋を開店。このとき66歳でした。

いくつになっても挑戦する精神には本当に尊敬します。開店早々、父にガンが見つかりましたが、治療を支えながら今も仕事を頑張っています。

そんな走り続ける母にパワーを与えるようなお花を贈りたいです。ちょっと変わっていて、元気の出るアレンジをお願いします。

  

花束を作った東信さんのコメント

アクティブなお母さんのイメージでアレンジしました。大人っぽい落ち着いた色味ですが、元気いっぱいワイルドで、パンチの効いた感じでしょ?

花は、黒いカラーや葉牡丹、毛むくじゃらのベニの木など、ちょっと珍しいものを使っています。赤いアンスリウムも変わった形です。ところどころにランの一種であるシンピジウムやチューリップを加えました。ボリュームのあるリーフワークはコンパクタです。

大人のかっこいい女性に似合うようなアレンジになりました。お母さんの反応はいかがでしょう?

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

モンチッチのようなパワフルな母に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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