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<8>千駄木の不忍通り沿いにフランスの薫り

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 不忍通りに面した、築50年ほどの小さな店。かつてスナックや喫茶店だったころの面影が色濃く残り、昭和の匂いを感じさせる。

 夕暮れ時に開店するらしいが、開いていないこともしばしば。開店を告げるのはTwitterのツイートのみ。閉店は23時ごろというが、客がいれば深夜まで開いていることもある。「成り行きでやっていて、生活のだらしなさが出ています」とオーナーの羽毛田(はけた)顕吾さん(37)は笑うが、それもまた「books & café BOUSINGOT(ブーザンゴ)」らしさのように思える。

 大学時代にフランス文学を専攻していた、自称“フランスかぶれ”の羽毛田さん。学生のころは古本屋でアルバイトをして、夏になると1カ月ほどフランスに渡った。ぶらぶらしながら街のいたるところに点在するカフェで読書する。そんな幸せに浸っていた。

 卒業後は小さな出版社で編集者として働き、9年前にこの店をオープンさせた。

「古本屋といえば神保町ですが、古本市場のお客さんは9割がおっさんという印象です。でも、本好きってもっと層が広いと思うし、あまり古本屋に足を運ばない人もいっぱいいるはず。そんな人たちにも古本を手に取ってもらえる場所があればいいと思って、カフェと古本の店を作ったんです」

 千駄木を選んだのは、そこそこ文化的で落ち着きのあるたたずまいだから。また、この界隈の古本店や本好きのライターなどが集まって「不忍ブックストリート」を盛り上げていたのも理由の一つだという。

 店内に並ぶ約2千冊の古本は、フランス文学を中心としたフランス関連の書籍のほか、芸術、文化、歴史、哲学、音楽と多岐にわたる。端正な文学作品や一癖ありそうな哲学の本、風変わりな芸術の本など、きらりと光る本がある。当初は羽毛田さんの蔵書を並べていたが、今は羽毛田さんがこつこつ開拓した場所で仕入れた古本が多い。

「本の寿命はどんどん短くなって、初版部数も少ない。人目に触れる機会も少なく、出たことすら気づかれないまま消えていく本はたくさんあります。ことさらにマニアックではないけど、ベストセラーにもなりそうにない。そんな1冊を誰かがここで見つけてくれればいいな、と思っています」

 店名の「ブーザンゴ」とは、1830年代のフランスで、急進的な考え方を持つ作家や画家の卵たちの呼び名に由来している。ここに集まってきた本も、そうした精神を宿しているのかもしれない。

(次回は2月5日に掲載予定です)

■オススメの3冊

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『サン=ジェルマン=デ=プレ入門』(ボリス・ヴィアン)
戦後、サン=ジェルマン=デ=プレに集った有名無名500名の人物や街の様子を、奇才・ヴィアンが軽妙な筆致で描きだした1冊。「実は私が出版社で最後に作ったものなので、特に思い出深いんです。造本も凝りました」

『明治の文学15 斎藤緑雨』(斎藤緑雨、坪内祐三・編集)
36歳で早逝したが、アフォリズムの名手として知られる明治時代の小説家の作品集。「緑雨の作品は他でも読めるけど、この本は注釈が充実しており、読者にちゃんと読んでもらおうという工夫がされているのがいい」

『超男性』(アルフレッド・ジャリ)
自転車と機関車の競争や、一晩でどれだけ連続して性交できるかという実験など、奇妙なエピソードが絡み合った奇想天外な小説。「学生の頃から好きなフランス文学の中で、最も好きな一冊。単行本版は装丁もいいんです」

(写真 石野明子)

    ◇

books & café BOUSINGOT
文京区千駄木2-33-2
03-3823-5501
http://www.bousingot.com/

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PROFILE

吉川明子

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体に週刊朝日、アサヒカメラ(「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、婦人公論、BRUTUS、mi-molletなど。
https://www.instagram.com/a_yoshikawa0227/
https://note.mu/akikoyoshikawa

<7>手に取ることのできる本というアートを

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<9>三軒茶屋に月の満ち欠けのような空間

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