花のない花屋

母のような、お好み焼き屋の3姉妹へ

  

〈依頼人プロフィール〉
横地泉さん 36歳 女性
神奈川県在住
会社員(造花アレンジメント販売)

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近所に、週1回通っているお好み焼き屋さんがあります。広島県出身の60代の3姉妹が切り盛りしている、あたたかくて素敵なお店です。もともと、長女と3女が広島で15年ほどお好み焼き屋さんをしていたのですが、結婚して神奈川に移住した次女が独身の2人を呼び寄せ、3年前に3人でお店をオープンさせたのです。

開店当初、私は偶然見つけて入ったのですが、お店の雰囲気や料理がとても気に入り、それ以来、毎週のように通っています。喧嘩(けんか)をしながらも仲良く切り盛りする3姉妹を見ていると、九州にいる自分の家族のあたたかかさを思い出して、ほんわかとした気持ちになります。

今でこそ人気店となりましたが、開店当初はお客さんが少なく、顔見知りになると、「これからどうしよう?」と相談を受けたりもしました。ホームページやチラシを作る手伝いをしているうち、いつしかお互いに差し入れをしたり、自転車で一緒に朝市へ行ったり、休日にご飯を食べに行ったりするほどになりました。

私が体をこわして入院したときも、真っ先にかけつけてくれたのが彼女たちです。私の夫が「お母さんみたいだね」と言うと、3人は「年の離れた友達だ」と怒るのですが、本当に家族のような存在です。

そんな3姉妹ですが、最近あまり元気がありません。1年ほど前に心の支えだった猫が亡くなり、さらに店が忙しくなって体調を崩すことが多いようです。何かを差し入れても、以前のような笑顔が見られなくて心配です。いつもお世話になってばかりなので、今度は私から、3人を少しでも笑顔にできるようなお花を贈りたいです。

私は趣味で造花のアレンジメントを販売していますが、3姉妹からは「造花よりも生花が好きなのよね~」と言われているので(笑)、東さんの素敵な花束をプレゼントしたいです。

3人は一度だけ行ったハワイに思い入れがあるようで、お好み焼き屋さんなのに店名にもハワイ語を使っています。ハワイを思い出し、見ただけで気分が明るくなるような、トロピカルなアレンジをしていただけないでしょうか。

  

花束を作った東信さんのコメント

“華やかなトロピカル”がテーマです。ハワイというキーワードがあったので、まずトロピカルな植物を大胆に使いました。中心に差したネオリゲリアや、いかにも南国らしいストレチアやヘリコニア、アンスリウム、キングプロテア、ピンクッションなどです。どれも大きく、色や形にパンチがあります。

その周りをたくさんのランで囲みました。南国の植物だけでまとめると、どうしても少しとげとげしい印象になってしまいます。エピソードからは3姉妹のあたたかな人柄が伝わってきたので、華やかさや、やわらかさを出すため、斑やストライプなど模様が入ったランを選びました。

お店にも飾れるよう、匂いの強くないお花を選んでいます。長く持つと思いますので、みなさんで楽しんでくださいね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

母のような、お好み焼き屋の3姉妹へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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http://azumamakoto.com/

PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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