花のない花屋

アフリカの娘から、金婚式の両親へ

  

〈依頼人プロフィール〉
古川涼子さん(仮名) 48歳 女性
アフリカ在住
準公務員

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私は今、アフリカ中部のブルンジ共和国というところに単身赴任して暮らしています。娘が小学生の頃まではアジアで開発関係の仕事をしていたのですが、日本の中学校に入るため、家族で日本へ帰ってきました。

しばらくはまったく違う職についていましたが、いつかはアフリカで国際協力の仕事をしようと、働きながら大学院へ通ったり、フランス語の勉強を続けたりしてきました。そして、娘が無事大学に入った2年前、ひとりでアフリカにやって来たのです。

70代の母は、私が「アフリカへ行く」というと、「ええっ?!」と言ったきり、しばらく絶句していました。弟が両親の家の近くに住んでいるので安心なのですが、年末に一時帰宅で母を訪ねたとき、私のことをいろいろと心配してくれているのがわかりました。
私がこうやって好きな仕事を続けられるのも、家族と両親の理解があるからです。最近は忙しくて年に1~2回しか帰国できませんが、私に代わって両親が娘を気にかけ、面倒をみてくれています。

ふたりはともに70代で、地方都市で年金生活をしています。これまで特に大きな怪我や病気もせず、40年以上前に建てた家にずっと住んでいます。この3月には金婚式を迎えます。なかなか会うことができませんが、「これまで通り仲良く、長生きしてね」という思いを込めてお花を贈りたいです。

父も母も土いじりが好きで、50坪ほどの庭には枯山水を基調に、松、梅、百日紅(さるすべり)、紅葉、こぶしの木などが植えてあります。隅には、チューリップやパンジー、水仙といった好きな花を植えて楽しんでいます。

両親のシンプルな生き方を表すように、ありふれたお花で、見ていてほっとする花束を作っていただけないでしょうか。できれば、遠くにいる娘のことを思い出してもらえるよう、植え替えて育てることができる植物を入れていただけるとうれしいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

ブルンジ共和国というのはルワンダの南、あのフツ族とツチ族の対立があったあたりなのですね。すごいところで働いていらっしゃるのですね。

「アフリカにいる娘から」とのことなので、アフリカ産のコーヒーの木を中心にアレンジしました。木は土がついたままなので、そのまま植え替えて育てることができます。

ご両親はナチュラルな感じがお好きそうだったので、全体的にグリーンを多めにしています。グリーンはゼラニウムなので、手で少しこすって匂いをかぐととても良い香りがしますよ。

花も野で摘み取ってきたばかりというイメージでまとめています。フリージアやチューリップ、ラナンキュラス、ガーベラといった親しみやすいものや、サンタンカ、エピデンドラムといった小花、ゼンマイなどです。

子育てが一段落した後、ご自分の夢を叶えるため、アフリカへ渡るなんてすごいこと。がんばってくださいね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

アフリカの娘から、金婚式の両親へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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