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<12>カウンターカルチャー守る「秘密基地」

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 「気流舎」にはオーナーがいない。15人ほどのメンバーが中心となって店を運営し、交代で店番をしている。

 東京・下北沢のにぎやかな商店街を通り抜け、雑居ビルの脇腹を掘ったような、小さな空間。設計は建築家の村山雄一さん。「自分でつくれること、予算内でできること、あたたかい空間であること、自然素材を使うこと、嘘がないこと……」といった、施主のわがままな希望をすべて採り入れた。施主は1年かけて仲間たちとセルフビルドで作り上げた。

 たった4坪しかない秘密基地のような空間。ロフトスペースを支える太い柱の周りには楕円形のテーブルがあり、壁際のベンチと合わせても、15人も入ればいっぱいになってしまう。

 メンバーのひとり、佐藤正樹さん(38)はインターネットで順次更新されていく、工事の進捗状況に注目していた。店がオープンすると、いつの間にか常連になっていた。

「ここに来ると誰かいて、面白い人とつながれることもあります。曲線が多く、木の温もりもある空間で、人が交流しやすいんでしょうね」

 店は「対抗文化専門古書」と銘打っている。1960年代のヒッピー、サイケデリック、アナキズム、ニューサイエンスといったカウンターカルチャーの専門古書店として2007年にスタートした。

 東日本大震災を機に、この空間を作り上げたオーナーが東京を離れることを決めた。店も閉じることも頭をよぎったが、ここに集う人たちは、なんとかこの空間を維持したいと考えた。世代や性別、仕事も立場も違う人たちが話し合った末に出したのが「共同運営」という結論だった。

「メンバーは隔週で会議をして店の方針を決めています。そして、店番をする、お金を出す、イベントを企画するなど、それぞれが自分にできることをやっているんです」

 空間の維持という一つの目的のために集まった、オーナーもリーダーもいない集団での経営は面白いけれど、意思決定がスムーズにいかず大変なことも多い。それでも模索しながら一歩ずつ前に進んでいる。

 約1千冊が並ぶ本棚には、今や化石のようにも見えるカウンターカルチャー関係の本が詰まっている。佐藤さんは「カウンターカルチャーの本の保護活動のようなものです」と笑う。

 下北沢という土地柄か、価値観が揺らぐ時代でもあるからか、「秘密基地」のような店にはさまざまな人が訪れる。カフェ好きの女性やバックパッカー、ヒッピー世代を知る人までまじって話の輪が広がることもあるという。佐藤さんは言う。

「60年代よりも、むしろ今のほうが、価値観が揺れているように思います。何が正解かわからないところを生きている時代だからこそ、いろんな人が集い、語れる場が必要なのかもしれません」

■オススメの3冊

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『気流の鳴る音』(真木悠介)
 現代社会に抑圧された自我を解き放ち、人間本来の生き方を模索する60年代ヒッピー世代の思想的なバイブル。「店の名前の由来になった1冊です。メンバーはこれを読んで価値観を共有することになっているんですけど、読んでない人もいますね(笑)」

『アイアムヒッピー 日本のヒッピー・ムーブメント史 ’60-’90』(山田塊也)
 日本のヒッピーの草分け的存在である山田塊也氏による日本ヒッピー史。「長く絶版になっていたのですが、増補改訂版が発売されました。日本ヒッピー初の新聞『部族』創刊号を完全復刻した付録が素晴らしいんです」

ポートランド「マイクロコズム」の『ZINE』(「マイクロコズム」)
 大手の流通ルートから外れた小出版物。判型やデザイン、テーマはさまざま。「自分たちで出版物を作るDIY(Do It Yourself)は、現代におけるカウンターカルチャーのキーワードのひとつ」

(写真 石野明子)

    ◇

気流舎
世田谷区代沢5-29-17 飯田ハイツ1F
03-3410-0024
http://www.kiryuusha.com/

(次回は4月2日に掲載予定です)

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PROFILE

吉川明子

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体に週刊朝日、アサヒカメラ(「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、婦人公論、BRUTUS、mi-molletなど。
https://www.instagram.com/a_yoshikawa0227/
https://note.mu/akikoyoshikawa

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