Woman’s Talk

〈Woman’s Talk〉糧になるものを蓄える意欲が湧いてきた ともさかりえさん

“お芝居”と仕事の間で葛藤した時期もありました

 震災から4年を迎える福島を舞台にしたドラマ「LIVE! LOVE! SING!生きて愛して歌うこと」(NHK)で、津波で失ったパートナーを捜す女性を演じた。
「フィクションなのにドキュメンタリーみたいな撮影で、演じる、ということが通用しない、自分の気持ちが本当に動かないとできないような現場でした。難しかったけど、いい経験でした」
 12歳でドラマデビュー。すぐに注目を集め、アイドルとしても人気を博した。「何をやっていたのか、どんな人に会っていたのかほとんど覚えていない時期がある」ほど、高校時代は忙しかった。
「華やかな世界だと思っていたのに、できないことが多くて叱られてばかり。何度も心が折れそうになりました。それでもついていけたのは、お芝居が大好きだったから。あんなに時間をかけて教えていただけたおかげで、今もこうやってお芝居がやれている。恵まれていたと思います」
 これまでに出演したドラマは70本以上。舞台、映画を含めると、出演作品は100本近い。順調にキャリアを積み重ねてきたように見えるが、20歳を過ぎてからはしばらく、葛藤の時期があった。潔癖さが垣間見える。
 「大好きな“お芝居”を生活の手段の“仕事”とつなげて考えることができなかった。お金と結びつけた途端、夢がなくなる気がしたし、好きなことだけやっていたかった……。25歳で子供を産んで、働くことの意味がやっと理解できた。難しい仕事、前のめりになれない仕事も、自分の中で楽しく変換できる力がついてきた気がします」

日々、バージョンアップしていく息子とどう向き合うかが課題

 息子さんはもうすぐ小学5年生。「優しくしていたいし、イライラしたくないけど、一日中きーっとなっている気がします」と苦笑する。原因はお弁当箱を出さないとか、ランドセルの底に地層のようにプリントを重ねているとか、ちょっとしたこと。息子さんとのやりとりを再現する口調はからりとしているが、表情には一抹の寂しさも。
「子育ては子どもが自立するお手伝い。もう見守る時期だとわかっていても、かわいいからつい助け舟を出したくなってしまう。どんどんバージョンアップしていく息子と、いかにちゃんと向き合ってあげられるかが課題だな、と日々思っています」
 子どもの成長とともに、少しずつ自分のことも考えられるようになった。子どものことを最優先し、仕事より子どものそばに、と思う時期は、過ぎ去りつつある。
 「改めて、これからもずっとお芝居をやっていくんだ、という覚悟もできたし、いろんなものを吸収し、糧になるものを蓄えるための自分の時間を作ろうという意欲が湧いてきました。結局それが、仕事にも子育てにも返ってはいくんですけどね。私が安定したら、息子も何か落ち着いてきたし」
 最後に女優としての今後の目標をきいた。
「このセリフはこんな風にも言えるんだとか、こんな表現もできるんだとか、思い描いていないところに行けたときが一番楽しいので、その瞬間を増やしていけたら幸せだな、と思います。厳しく私と向かい合ってくれるスタッフと、出会いたいですね」
 人生の2/3を女優として過ごしてきた今も、成長と変化を求め続けている。この貪欲さが、女優としてのともさかさんを輝かせていると思った。

撮影:渞 忠之/文:木村由理江
スタイリスト:安藤眞理/ヘアメイク:北一騎(Mg.パーマネント)

    ◇

ともさか・りえ(女優)
1979年10月12日、東京都出身。12歳でデビュー。すぐに注目を浴び、以後、ドラマを中心に、CM、舞台、映画、音楽と活躍の幅を広げる。25歳で第一子の長男を出産。出産後もコンスタントに仕事を続け、2014年に朝の連続テレビ小説「花子とアン」(NHK)、「ファーストクラス」(フジテレビ)にも出演。現在は花王「メリット」のCMにも出演中。3月10日(本日)-放映の「LIVE! LOVE! SING! 生きて愛して歌うこと」(NHK)に出演。

■この記事は、2015年3月10日付朝日新聞朝刊「ボンマルシェ」特集のコーナーの転載です

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