花のない花屋

急死した母に代わって私を支えてくれた姉へ

  

〈依頼人プロフィール〉
石川友紀子さん(仮名) 50歳 女性
東京都在住
大学勤務

    ◇

母が亡くなってから、4月28日で25年が経ちます。ちょうど連休の初日で、みんなで旅行にでも行こうと話していた翌日に、突然心不全に襲われ亡くなってしまいました。まだ52歳でした。

一卵性双生児の姉と私は、たまたま二人ともお腹に赤ちゃんがいましたが、孫の顔を母に見せてあげることはできませんでした。その二人の息子たちももう25歳です。

姉はすでに第一子を産んでいましたが、私にとっては初めての子ども。何を食べさせたらいいの? どう育てたらいいの? と不安ばかりでしたが、姉が母に代わって何から何まで支えてくれました。

姉とはずっと一緒に生きてきました。山形から上京し、東京で学生生活を送っていたときも、その後就職してからも、結婚するまではずっと二人で暮らしです。二人とも理系で、偶然同じ検査技師という資格をとり、姉は病院へ私は研究所へ就職しました。働き出してすぐ、私が体調を崩してしまったときに看病してくれたのも姉でした。

当時は通勤電車が同じだったので、お互いの同僚から間違われることもしばしば。姉が「いま何時?」と話しかけられたというので、よくよく聞いてみると私の上司だったこともあります。

結婚してからはお互いの家庭があるので、あまり会えなくなりました。でも、この25年間、母の代わりとなり私を支えてきてくれた大切な姉へ、すてきな花束を贈りたいです。姉は洋風の家に住んでいて、ピンクっぽい色やフレンチカントリーな雰囲気が好きです。お花も好きで、この連載を教えてくれたのは彼女でした。花の中では桜やバラがお気に入りですが、チューリップにも思い入れがあるそうです。誕生日になると、いつも母がチューリップを生けてくれていたのを思い出すそうです。華やかな気持ちになれるようなお花を作ってもらえたらうれしいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

思い出のチューリップをポイントに、ピンクのグラデーションで華やかにまとめました。気をつけたのは、甘くしすぎないこと。白っぽいピンクだとファンシーになりすぎるので、紫がかったピンクやスモーキーなピンクを間に挟み込んでいます。

小振りのチューリップは短く切って差していますが、これからどんどん伸びます。花が咲く頃には、チューリップの下にピンクのお花畑が広がるという、高低差のある2層のアレンジになっていきます。

使用した花は、カーネーション、エピデンドラム、カラー、バラ、カランコエ、ブバルディア、ナデシコ、ネリネなど。印象的なふわふわしたグリーンはディンゴファーンという植物です。見ていてやさしい気持ちになれます。

華やかでありつつ、どこかほっとするようなアレンジを目指しました。姉妹お二人にとって記念の花束になりますよう。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

急死した母に代わって私を支えてくれた姉へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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