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<17>渋谷駅裏、エッジの効いた古本屋

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 東急東横店を中心に、「50年もしくは100年に1度」ともいわれる大規模開発が続く渋谷駅周辺。JR渋谷駅南口ロータリーを越えた渋谷マークシティ裏は、昼は比較的静かなエリアだが、夜になると繁華街のにぎわいを見せる。

 そんな場所の一角に「渋谷古書センター」という名のビルがある。1階は1947年にビルが建ったときから続いている「古書サンエー」。2階には、国内外のアートやファッション、写真集、雑誌などエッジの効いた古書をそろえる「Flying Books」が入っている。店長を務めるのは山路和広さん(40)。「古書サンエー」を営んでいるのは山路さんのお父さんだ。

 とはいえ、古書店の息子だからといって父と同じ道を歩んできたわけではない。大学卒業後、山路さんは大手CDレンタル・書店チェーン本社に入社した。アメリカのビジネススクールへの留学を前に、社会人経験を積むために選んだ会社だった。入社後、東海地方でCDのバイヤーとなったが、店舗で新刊書も扱うようになり、次第に本への関心が高まっていったという。

「本はCDと違って、プレイヤーや電気がなくても簡単にアクセスできます。世の中の99%以上の本は古書でしか入手できないといわれていて、取次を通す新刊本よりもはるかに大きな可能性を古書に感じたんです。万人に受ける品揃えではなく、100人でも50人にでも深くコミットできて、その人の価値観を刺激する店の方が面白い」

 留学を考えていた2000年ごろ、ちょうど「渋谷古書センター」の2階が空いたこともあり、留学資金を店の開店資金に回す決断をした。その後、数年の準備期間を経て03年に店をオープンした。

「本は時空を超えて旅に連れて行ってくれるものであり、本棚に並ぶ本は文字通り世界を旅して来たからこの店名なんです。旅先にふらりと立ち寄った時、前と変わらないお店があるとホッとしますが、ここも誰かのそんな店になればいい」

 店内の本棚を眺めていると、山路さんが好きな「ビート・ジェネレーション」(50年代のアメリカ文学界で生まれた文化芸術運動)を起点に、海外文学、詩集、ネイティブアメリカンの考証、禅や仏教などの本がならび、まるで木の枝葉が伸びるように、本の“文脈”があちこちに広がっていく。

「ジャンルではなくテイストで切り分けています。ネット書店でも『こちらの本もオススメです』と出てきますが、せいぜい数冊。在庫量ではかなわないかもしれませんが、リアルな書店の棚では、棚の横に目を向けると関連のある本が数冊どころか何百冊も並んでいるんです。そこにこの店の存在意義があると思っています」

 中央の棚は可動式で、広いスペースを作れるようにした。フランス語で歌うシャンソンと、その歌詞について語る会など、山路さんが「ここでやる必要がある」と思う、本や音楽にまつわるイベントを不定期で開催している。

「渋谷では大規模開発が続いていますが、ハコができてもどんなコンテンツを作っていくかが大事。僕らはインディペンデントの目線でいかに楽しめ、遊べるかを考える。そういったことをやっていくしかないんです」

(次回は6月25日に配信予定です)

■オススメの3冊

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『СОЧИ – SOCHI』
ロシアが誇る、黒海のリゾート地ソチの魅力を紹介した一冊。「1959年に刊行されたんですが、社会主義国とは思えない、今まで知らなかったロシアの一面を見せてくれます。グラッフィックデザインも美しい」

『猫が…』(西村多美子)
60年代に唐十郎の状況劇場の写真を、70年代以降は日本各地を旅しながら撮り続けた西村多美子の写真集。「森山大道的な荒々しい写真でありながら、女性ならではのやさしい視点が垣間見えます」

『No Wrong No Right』(Jesse Harris with Star Rover)
シンガーソングライター・ジェシー・ハリスの通算13作品目となるアルバム。ジェシーと親交がある山路さん。「このアルバムはNYロングアイランドの写真と詩のブックレットがセットになっていて、彼の世界観をより感じることができます」

(写真 石野明子)

    ◇

Flying Books
東京都渋谷区道玄坂1-6-3 渋谷古書センター2F
03-3461-1254
http://www.flying-books.com/

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PROFILE

吉川明子

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体に週刊朝日、アサヒカメラ(「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、婦人公論、BRUTUS、mi-molletなど。
https://www.instagram.com/a_yoshikawa0227/
https://note.mu/akikoyoshikawa

<16>「太宰愛」で満たされた空間

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<18>対照的な二人がつくった唯一無二の場所

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