花のない花屋

離婚後、娘を大事に育ててくれた義母へ

  

〈依頼人プロフィール〉
西ゆきさん 35歳 女性
東京都在住
美容師

    ◇

私は19歳で結婚して子どもを産み、25歳で離婚しました。

当時6歳だった娘の親権を争い、別居して離婚調停をしていたとき、祖母の介護をしていた母がくも膜下出血で倒れました。まだ57歳でしたが、半身麻痺になってしまい、それから私は家と職場、病院を駆け回る生活に……。

昼間は美容師として働いていたので、昼休みを使って病院へ通い、仕事が終わると急いで保育園に娘を迎えに行き、ご飯を作って寝かしつけ、夜は副業で再びヘアメイクの仕事へ行く日々でした。

それまでは、夜は母が娘を見ていてくれたので、母の力を借りて子育てをしようと思っていましたが、入院で事態が一変。娘が一人でいる時間が増えてしまいました。いろいろ悩みましたが、寂しい思いをさせるよりは、前夫と義父母宅で暮らす方が幸せかもしれない……と思い、最終的には親権を手放しました。

それから娘は、前夫と義父母と暮らすようになり、愛情をいっぱいに受けて育ちました。義父母は、実の娘さんを数年前にガンで亡くされたばかりだったので、まるで本当の娘のようにかわいがってくれました。娘さんにしたかった分まで愛情を注いでくれた気がします。もともと義母と私は仲が良く、離婚後もそれは変わらず、私が娘に会いたいときには自由に会わせてくれました。義父母には本当に感謝してもしきれません。

今年から娘は高校生です。今は義母が毎日お弁当を作ってくれているそうです。娘と会って話をすると、毎日がとても楽しそうです。夫と離婚はしてしまいましたが、義父母は娘にとっては血の繋がった家族であり、私にとっては大切な人たちです。

娘が高校へ入学し、子育てがひと区切りを迎えた今、義母にたくさんの感謝を伝えるお花を贈りたいです。義母はお花が大好きで庭にもたくさんの植物を植えています。花好きな人でもあっと驚くような珍しいお花をたくさん使った、華やかな花束を作っていただけないでしょうか。

  

花束を作った東信さんのコメント

「あっと驚くような珍しいお花を」ということだったので、いろいろ取り揃えました。市場でも表示がなかったくらい珍しいオランダ産のユリ、フルーツのような肉感のあるタケシマユリ、カランコエの仲間でベルベットのような質感の葉、食虫植物のサラセニア、オレンジ色のバショウから、アスター、クルクマソウ、トルコキキョウ、ミニコチョウラン、ケイトウ、トリトマ、アガパンサスなどお馴染みの花まで色とりどりです。

カーネーションやケイトウなどの花は下の方に、動きのある花や形の変わった花を上の方にまとめて少し段差をつけました。個性の強い花が多いので、ところどころに淡い色の花を入れてつなげています。

カラフルなアレンジのコツは、反対色を隣に置くこと。そうすることで、お互いの良さがより強調されて華やかになります。

まわりのグリーンはタマシダです。1本60センチくらいのものを切り、両端の葉を抜いてオアシスに差しました。離婚をした後もいいご縁が続いていきますように……。そんな願いを込めてループ状にしています。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

離婚後、娘を大事に育ててくれた義母へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


究極の“断捨離”を敢行した母に

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