花のない花屋

仕事も子育てにも、まっすぐな妹に

  

〈依頼人プロフィール〉
田中有希さん(仮名) 42歳 女性
東京都在住
会社員

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7月は妹の誕生月です。子どもが二人いるようにはとても見えない、いつ見ても若々しくおしゃれな彼女ですが、とうとう40の大台に乗ります。

妹は大学を卒業後すぐに結婚し、二人の子どもに恵まれました。念願であった医師にもなり、それからずっと仕事と子育てを両立させながら激務をこなしていました。所属する学会の賞もいただき、キャリアを着実に築きあげています。

まわりを巻き込むタイプなので、正直ハラハラすることも多かったのですが、私にはとても想像できない道をまっすぐに歩み続ける妹には、やはりすごいと畏敬(いけい)の念を抱きます。

妹は小さいころからバレエが大好きで、運動会でもキレのよいダンスを見せていました。昔から負けず嫌いで、犬に追いかけられても涙をぬぐって一人で幼稚園に向かっていたことを覚えています。キラキラした瞳と、他を寄せ付けない強烈な個性の持ち主でした。

小児眼科を専門にしているので、赤ちゃんや幼児を診ることも多く、成長した患者さんが、「先生のようなお医者さんになりたい」と言ってくれた話を聞くと、私まで本当にうれしくなります。妹の患者さんの話を聞くことが私の楽しみの一つです。

がむしゃらに生きながら、どこか繊細な面も持つ妹。不惑の年を迎えるお祝いに、夏らしい百合の花を中心とした花束を東さんに作ってもらえないでしょうか。周りの人への配慮と感謝を忘れず、どうか謙虚で元気に働き続けてほしいという私の願いも込めてお花を贈りたいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

ユリの花でというご希望に沿い、ユリをメインにアレンジしました。ユリは品種がかなりあるのですが、今回使ったのは純白でほのかな香りが特徴のシベリア。ほのかとはいえ、これだけ差したので優雅な香りがあたりに漂っています。

「これからも健康に気遣って頑張って」という気持ちを表すため、まわりは野花をイメージしたグリーンでまとめました。ギザギザした表面が特徴的なペペロニアや、ヒカゲカズラ、トラノオ、アストランティアに加え、ゼラニウムやディクタムナスといったハーブも入れています。

ユリは下の方から順番に咲いていきます。これから上の方の花が咲き始めると、さらにゴージャスになるはず。開花を楽しみに、長く楽しんでくださいね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

仕事も子育てにも、まっすぐな妹に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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