花のない花屋

療養中の大切な優しい上司に

  

〈依頼人プロフィール〉
國吉 真紀さん 39歳 女性
神奈川県在住
会社員

    ◇

私が尊敬する上司は、75歳を過ぎてもフルタイムで働き、夏休みさえとったことがありません。自分には厳しいのに部下にはやさしく、サラリーマンの鏡のような方です。

私が育児休職から復帰して間もない頃は、子どもが急な熱を出したり、病気になったりして早退や休暇が続き、仕事がうまく進まず焦っているときがありました。そんなときは、「今は子育てを優先して、どのような仕事が適当か考えてみてもいいのでは」と優しく声をかけてくださいました。最近よく聞く“マタハラ”とは無縁の職場で働けたのは、上司のお陰だと思っています。

そんな方が、いま3カ月近くも休まれています。肺の病気で入院し、2回手術をして自宅で療養中とのことです。めったなことで休まない方がこんなに休まれているのは、かなり苦しい状態が続いているのではないかと思うと、私もとても辛いです。

これまでたくさん支えていただいたのに、何もできないことがもどかしいです。だから、せめて見るだけで穏やかな気持ちになれるようなお花を作っていただけないでしょうか。

職場は民間企業の法務部門です。上司は仕事柄、公平できちんとした方で、特定の色に染まっていない印象があります。山形の庄内平野のご出身で、大学は仙台だったそうです。可憐な花束というよりは、故郷のお花や和の穏やかなお花が似合うかもしれません。どうぞよろしくお願いします。

  

花束を作った東信さんのコメント

体調、心配ですね。入院していた上司の方へのお花とのことだったので、ハデハデしくなく、見ていて気持ちが穏やかになるようなアレンジにしました。

快気祝いにはイエローのお花を使うことが多いのですが、今回は緑や茶色っぽい色も加え、全体的にナチュラルな雰囲気に仕立てています。“野花を摘んで花束にした”というイメージなので、リーフワークは差しませんでした。

使った花材はおよそ10種類。ホトトギス、オグルマ、ナデシコ、ノイバラ、クサレダマなど和のお花と、ガーベラやバラ、マリーゴールド、セダム、モントブレチアなど洋のお花をミックスさせています。

目上の男性へのお花というのは難しいものですが、シンプルでナチュラルなものなら、抵抗なくよろこんでくれることが多いですね。一日も早く元気になってもらえますように。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

療養中の大切な優しい上司に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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