アイデアの生まれるところ

価値観を共有できる場所「VACANT」 スズキタカユキ

  

スズキタカユキさん (撮影 喜多村みか)

  

東京・原宿にあるVACANT

  

「ダンサーの鈴木陽平さんとのユニット“ルノメーターズ”のパフォーマンスも、このVACANTが会場でした」とスズキさん

舞台衣装を多く手がけていて、最近では藤田貴大さんが主宰する演劇団体「マームとジプシー」の公演も担当

舞台衣装を多く手がけていて、最近では藤田貴大さんが主宰する演劇団体「マームとジプシー」の公演も担当

  

2階のスペースに繋がる階段。公演の時は3階の控え室と行ったり来たり

仕立て屋のサーカス(photo:Ryo Mitamuta) 

仕立て屋のサーカス(photo:Ryo Mitamuta)

仕立て屋のサーカス(photo:Ryo Mitamuta)

仕立て屋のサーカス(photo:Ryo Mitamuta)

 「スズキ タカユキ(suzuki takayuki)」のデザイナーであり、有名ミュージシャンやダンサーなどの衣装も多く手がけてきたスズキタカユキさんと向かったのは、東京・原宿にある“フリースペース”「VACANT」。いま、多方面から注目を集めている即興舞台「仕立て屋のサーカス」のメーン会場だ。「CINEMA dub MONKS(シネマ・ダブ・モンクス)」の曽我大穂さん(マルチ奏者)とガンジーさん(コントラバス)、渡辺敬之さん(照明作家)、スズキさんの4人がおりなす布と光と音楽が交叉する空間で、スズキさんは即興で服を仕立てていく。

「僕にとって『仕立て屋のサーカス』の活動は、ものづくりの表現の一つ。学生時代から僕のまわりにはダンサーやシンガーといった表現者の方が多いのですが、彼らの表現は瞬発的で、精神的なエネルギーの爆発という強さがあるんです。そういう表現の強さは、服作りにも必要な要素。舞台という後戻りできない環境に自分の身を置いて、何かを生み出していく行為は、デザイナーとしての瞬発力と創造力を鍛える訓練になるとも思いますね」

 2009年にオープンした「VACANT」は、1階にオリジナルグッズやアートブックなどが並び、コーヒースタンドも併設。「仕立て屋のサーカス」の会場にもなる2階は、四方が木壁に囲まれた、どこか温かみを感じさせる独特な雰囲気のフリースペースで、蚤の市、演劇、ライブなど、日々様々なイベントが開催されている。「ジャンルの垣根を越えていろんな価値観や考え方を持った人たちが集まり、新しくて面白いことを実現できる、とても稀有(けう)な場所のひとつです」とスズキさんは言う。

「着る人に何を届けたいのか、どうしたら喜んでもらえるのかという視点は欠かせないものです。『VACANT』を介して出会った人のライフスタイルを知ったり、彼らと実際に何かをやったりすることが手掛かりになって、作りたいものが明確になることも多い。僕にとって、価値観を共有できるコミュニティーは、自分のアイデンティティーを再確認する場でもあるのです」

 「仕立て屋のサーカス」の公演で、空間、音楽、服、料理が交わり合いながら一つの物語を作り上げていくように、服作りも他のジャンルと密接に関わっている。服はあくまで生活の中の一部でしかないからこそ、パーソナルな価値観に寄り添ったものにしたいとスズキさんは語る。

「人生をポジティブなものにしたいというのが、『仕立て屋のサーカス』の重要なテーマの一つですし、『スズキ タカユキ』のブランドの根幹につながる部分でもあるんです。服は服だけ、食は食だけ、とそれぞれ分けて考えると、どうしても閉塞(へいそく)してしまう。人の衣食住だとか、服だけでない部分からファッションを作っていかなくてはいけないと思っています。それが、着る人のことを考えた服作りなんだと思っています」

スズキ タカユキの作品については、次のページへ

PROFILE

山口達也

ライター/エディター
大学在学時より東京を拠点に国内外のファッションデザイナーやクリエイター、アーティスト、ファッションウィークなどを取材・執筆。近年は『i-D Japan』『Them』『AXIS』など様々なメディアに寄稿。

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