花のない花屋

愛猫を亡くした、大切な友に

  

〈依頼人プロフィール〉
佐々木亜紀さん 48歳 女性
東京都在住
会社員

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最近、友人にあまり元気がありません。忙しいのもあるのでしょうが、この夏、15歳だった彼女の猫が、突然熱中症で亡くなってしまい、そのショックが大きかったような気がします。

彼女は東北の田舎町の中学時代の同級生です。高校まで宮城県の石巻市にいましたが、その後私は東京、彼女は福岡に嫁ぎました。お互い遠いので、会えるのは10年に1度くらいですが、今でもしょっちゅうメールのやりとりはしています。

4年前の震災のときは、私は仕事ですぐに実家に電話ができず、10日ほど両親や弟とは音信不通でした。死んでいるのか生きているのかもわからない日々が続く中、来る日も来る日も私の実家へ電話をかけ続けてくれたのは彼女でした。家族が無事であることを確認できたのは、彼女のお陰です。あのときほど、友人のありがたさを感じたときはありませんでした。

さらに私の実家へ、食糧物資を、しかも飼い犬の分まで最初に送ってくれたのも彼女でした。当時は様々な知人、友人から「私にできることがあったら言ってね」という言葉は頂戴いたしましたが、尋ねることもせず、相手の必要なものを自ら察し、考え、行動できる人は少ないということと、それができる友人の尊さを学びました。

九州と東北は遠く、彼女は震災のときに一度実家に帰ったきりだといいます。実家から遠く離れ、頑張って働く彼女の寂しさを慰めてくれたのは、きっと大好きな猫ちゃんだったのでしょう。

4年前のお礼もかねて、彼女が一日でも早く元気を取り戻してくれるようなお花を贈りたいです。

彼女のご家族はご主人と猫。オフィスワークをしています。今は力が出ない状態の彼女に、眺めるだけでやさしい気持ちになれるような、ふんわりとした優しい雰囲気のお花をお願いします。

  

花束を作った東信さんのコメント

今回は、やさしくふんわりした感じを出すため、全体をパステル色でまとめました。使用したのは、カーネーションやエピデンドラム、カップ咲きのバラ、ダイヤモンドリリー、ガーベラ、アゲラタムなどきれいな色の花ばかり。

その間に、ふわふわと起毛性のあるエーデルワイスやエアープランツのチランジア・テクトラム、ミントの葉など、質感の違うスモーキーなシルバーの植物を加えていきました。中間色なのでカラフルな色にもよく馴染みます。またアクセントとして、ペペミアの葉やハオルチアという多肉植物なども忍ばせました。

リーフワークは、ユーカリの仲間、ポポラスという植物の葉です。こちらも少しスモーキーなグリーンで、丸いかわいらしい形をしていています。

今はまだ悲しみを抱えているかもしれませんが、お花を見て、少しでも明るい気持ちになってもらえたら。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
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詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

愛猫を亡くした、大切な友に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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http://azumamakoto.com/

PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


尊敬する先輩へ、見たことがない花を

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