花のない花屋

2年前に旅立ったあなたへ

  

〈依頼人プロフィール〉
工藤弘恵さん 45歳 女性
北海道在住
会社員

    ◇

あなたは、学生時代から本音で話せる異性でした。高校は違ったけれど、福祉施設を訪問するボランティアクラブで出会い、社会人になってからもボランティアサークルを一緒に続け、気づけば30年近い付き合いでしたね。大勢で集まってワイワイ騒ぐのが好きで、休みの日は率先して計画をたて、みんなで遊びに行ったものです。ボランティアサークルでは、明るいひまわりのような存在でした。

そんなあなたは、2年前の暑い夏の日、大好きだった和太鼓の演奏中に倒れ、意識が戻ることなく旅立ちました。何の前触れもなく、突然のくも膜下出血でした。サークル仲間から「意識が戻らない」と電話で一報を受けたときは、まさかそのまま帰らぬ人になってしまうとは想像だにしませんでした。

私は、いつもまわりを楽しませていたあなたが大好きでした。もう2年、まだ2年……。あなたが旅立ったことを受け入れられず、いまだに手を合わせに行けません。ごめんなさい。いつか、思い出話ができるようになったら、笑顔のあなたに会いに行きたいと思います。

生きていれば、彼は今年の11月で45歳を迎えるはずでした。まだ気持ちの整理がつかない私の代わりに、ご両親をも元気にさせるような、見ていてほっとする明るいお花を作っていただけないでしょうか。

彼は看板を作る仕事をしていました。趣味は和太鼓。お祭りが好きで、人の輪の中にいるのが大好きな人です。まわりを元気にさせるような人だったので、花束も見る人を元気にさせるようなアレンジにしてもらえるとうれしいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

今回はエピソードに沿って、お祭りや和太鼓が好きだったという彼のイメージで全体をアレンジしました。

中心に差した赤い花の植物は、グズマニアという観葉植物です。太陽のような存在だった彼の象徴として入れました。そのまわりを取り囲むように、赤や黄色のダリア、ネリネ、ブバリア、エピデンドラム、マリーゴールド、ピンクッション、カーネーションなどを差しています。彼を取り囲む仲間たちというイメージです。ヒマワリも入れていますが、黄色い花びらだけが目立つように縦に差し、夏っぽくなりすぎないようにしました。

リーフワークは、ドラセナの“山折り”です。花がにぎやかなので、それに負けないよう立体的にしました。薄いグリーンに白が入っているので、明るさもあります。

お悔やみの花束というよりは、元気になれる花束を……。そんな工藤さんの思いを鮮やかな花たちに託しました。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

2年前に旅立ったあなたへ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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