花のない花屋

子ども嫌いだった私を選んでくれた息子へ

  

〈依頼人プロフィール〉
藤野莉加さん 27歳 女性
東京都在住
会社員

    ◇

昨年の12月10日、やっとの思いで授かった第一子が生まれ、早いものでもう1年になります。

私は20歳で学生結婚をしましたが、当時はどちらかというと子どもが嫌いでした。うるさくて邪魔としか思えず、子どもを作る気はさらさらありませんでした。

そんな私でしたが、大学を卒業しアパレルの会社で社会人として働き始めると、次第に心境の変化が訪れました。役職に就き、仕事がこれまで以上に忙しくなると、「辞めたいな」「子どもができたら辞められるかな」という思いが頭をかすめたのも事実ですが、それ以上に、まわりの友だちの子どもがあまりにもかわいかったので、自分も欲しくなったのだと思います。

それからというもの、すぐにでも子どもが欲しくて欲しくてたまらない毎日。夫とは仕事の関係で生活時間がすれ違い、なかなかすぐに授かることはできませんでしたが、1年半くらいたってようやく妊娠がわかったときは、心の底からうれしさがこみ上げてきました。その日に携帯で撮った青空の写真は今でも保存してあります。

出産ギリギリまで仕事をしていたので2度の切迫流産になり、激痛で立てなくなることもありました。ようやく生まれてきてからも、初めての子育てでわからないことだらけ。この1年間、毎日毎日、必死で子育てをしてきました。

我が家は夫が自営業のため、深夜にならないと帰ってきません。息子は、朝起きてから夜寝るまでの間、パパに会えるのは20分程度です。たぶん、この生活パターンが一生続くのかなと思います。それでも、この子が寂しくならないように、私は父親の代わりもしなくてはと思っています。

そんな中、私がひとつ決めたことがあります。それは「せめて誕生日のお祝いや節目の行事は盛大にお祝いしたい」ということ。こんな未熟な私のもとへ生まれてくることを選んでくれた息子に、感謝と1歳おめでとうという気持ちを込めて東さんの花束を贈りたいです。

息子の名前は碧葉(あおば)。生まれて初めて見る花束になるので、1色のアレンジというよりは、カラフルで盛大なものにしてあげたいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

1歳くらいの子どもへの花束というのは難しいもの。子どもだからと手を抜くと、まったく目にも留めてもらえません。子どもだからこそ、ぎゅっとエネルギーを凝縮させて作らないとだめなんです。

今回はかわいいカラフルというご希望があったので、おもちゃ箱をひっくり返したような花束にしました。カラフルなアレンジだと、きつい感じになる場合もありますが、今回は優しい雰囲気を出したかったので、小花や丸い形の花を多く使ったり、赤を抑えて黄色を多めに入れたりしています。また、ところどころ白や、やわらかい色をさしていくと、ほっこり優しい雰囲気が出ます。

ムスカリの球根やヒメリンゴもかわいらしさをアップさせています。他に使ったのは、レースフラワーやバラ、カーネーション、ダリア、ガーベラ、ラナンキュラス、マリーゴールド、アジサイなど。アジサイは黒っぽいものを使いましたが、これはまわりの花を引き立てるため。クリーム色でやさしい雰囲気のパフィオペディルムは、1歳の誕生日ということで、象徴として1本入れました。

花を目一杯使いたかったので、リーフワークは入れていません。グリーンを入れてしまうと大人っぽく仕上がってしまうのです。

お子さんの反応、いかがでしたか?

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

子ども嫌いだった私を選んでくれた息子へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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