あゆみ食堂のお弁当

<20>50歳から自炊だったお父さん、おつかれさま!

  

〈依頼人プロフィール〉
黒瀬陽子さん 36歳 女性
富山県在住
会社員

    ◇

65歳の父はもう15年間、家族のいる富山から離れ、静岡県で単身赴任をしています。 仕事は機械を作る技術者。職人気質で頑固一徹、さらに古風。「男がスーパーなんか入れるか、恥ずかしい!」なんて言って、買い物はおろか、カップラーメンすら自分で作らないお父さんでした。

単身赴任が決まった時、「ついて来てくれないか」と母に言ったお父さん。外食が嫌いで、もちろん自分で料理なんてできない父ですから、本当に家族一緒に来てほしかったのだと思います。 でも、母はフルタイムの看護師。私も大学生で、まだまだお金がかかる歳。母も仕事を辞めるわけにいきませんし、家には老いた祖父母もいました。もろもろの事情を考慮した結果、母が出した答えは「そんなことできるわけないやろ」。その一言で、父の単身赴任が決まったのでした。

50歳から突然始まった父の一人暮らし。もちろんお米を炊くのも初めての経験です。しばらくはご飯とカップラーメンの食事が続いていたようですが、徐々に野菜を切ってサラダを作ったり、ちょっとした自炊をするようになったとか。「お父さんが包丁を持ってるらしいよ!」。そんな父の小さな変化と成長に、私も母も感動したものでした。

そんな父ももう少しで定年退職。15年間、富山の実家に帰ってきたのは、お盆と正月くらい。「自分が休んだら若い者に示しがつかない」と、誰よりも早く仕事場に行き、最後まで働く毎日だったそうです。中学卒業後、すぐに就職し、ものづくり一筋。65歳まで現場で働くことができたのは、器用さはもちろん、何よりその真面目さと、仕事に対する真っ直ぐな姿勢の賜物でしょう。私の周りではもう中卒のお父さんなんて珍しく、学生の頃は恥ずかしく思ったこともありました。でも今は、だれにも負けない自慢のお父さんだと思っています。

長いあいだ本当にお疲れ様、家族のために働いてくれてありがとう。これからはお母さんと孫と一緒に毎日を楽しいんでね。そんな感謝と、新しい門出のお祝いの気持ちを込めたお弁当を持って、お父さんを迎えに行きたいと思っています。

これまで仕事一筋だった父ですから、これといった趣味もありませんが、学生時代はスキーの国体選手の候補に名前が挙がるほどのスポーツマンだったそうです。会社では厳しい上司のようですが、帰省した際には私の娘と一緒にお風呂に入ってくれる優しいおじいちゃんに変身します。好物は焼き魚、煮しめなど昔ながらのお惣菜です。15年間、一人で食事をしていた父なので、素朴で家庭的な味を食べてもらいたいなと思います。どうぞよろしくお願いします。

ゆずの香りのお稲荷さんで華やかに

こんにゃくは炒める前にフライパンで炒ると、こんにゃくの食感が良くなり、味も染みやすくなります。表面がチリチリとしてくるくらいを目安に。


こんにゃくは炒める前にフライパンで炒ると、こんにゃくの食感が良くなり、味も染みやすくなります。表面がチリチリとしてくるくらいを目安に。

<献立>
ゆずの香りのお稲荷さん
鰤の西京焼き
里芋とにんじんの煮物
ブロッコリー
蕪のゆず麹漬け
ピリ辛こんにゃく炒め

<あゆみさんのコメント>
長い間単身赴任していたお父さんへ贈るお弁当ということで、少し華やかなお稲荷さんをメインに、なじみのある味付けのお惣菜を詰め合わせたお弁当を作りました。

お稲荷さんは、酢飯を作るときの合わせ酢に柚子果汁を加え、さらにご飯に柚子の皮を混ぜ込んで香りをつけます。仕上げに三つ葉でくるりと結び、少しよそいきの印象に。煮物も丁寧に煮上げることで煮崩れなくきれいに仕上げました。やや地味に見えるピリ辛こんにゃく炒めですが、しっかりと乾煎りしてから炒めていくことで、味の滲み具合と食感の良い炒め物になります。

お仕事お疲れ様でしたの気持ちをこめて、慣れ親しんだ家庭の味が詰まったお弁当作りをしてもらえたら嬉しいです。

ゆずの香りのお稲荷さん/鰤の西京焼き/里芋とにんじんの煮物/ブロッコリー/蕪のゆず麹漬けピリ辛こんにゃく炒め


ゆずの香りのお稲荷さん/鰤の西京焼き/里芋とにんじんの煮物/ブロッコリー/蕪のゆず麹漬けピリ辛こんにゃく炒め

お祝いの雰囲気を出すため、お重のような趣のお弁当箱を使いました。光沢感があって、上品な佇まいです。


お祝いの雰囲気を出すため、お重のような趣のお弁当箱を使いました。光沢感があって、上品な佇まいです。

(ライター/小林百合子)

<19>世話になった叔父に、感謝の「ごはん抜き」弁当

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