花のない花屋

離婚して初めての冬 息子と娘、わたし自身に

  

〈依頼人プロフィール〉
関山有美さん(仮名) 43歳 女性
福岡県在住
病院事務

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昨年夏、18年間の結婚生活に終止符を打ちました。私たち一家は、夫の転勤に合わせて縁もゆかりもない福岡で暮らしていたのですが、この3、4年間は歯車が合わなくなり、まるで闇の中にいるようでした。

今思えば、最初は嫁姑の関係が悪くなったところから始まりました。そして、子育てが落ちつき、私が資格をとって働き始めてからどんどんおかしくなっていったのです。病院の事務で働き始めたので、土日も仕事が入るときがあります。家事を完璧にこなして家を出ても、夫から「遊び歩いている」となじられ、気の強い私が反発すると、二人とも歯止めがききませんでした。

子どもの前で椅子を投げ合うこともあり、肋骨は3本くらい折れました。ご飯を作って食べようとすると、「なんで俺が稼いだ金でお前がご飯を食べているんだ」と言われ、カチンときた私はここ2、3年、家でご飯を食べませんでした。子どもたちのために料理はしますが、私だけは外で食べていたのです。

仕事が落ちついてきて、正社員への道が見えそうになった頃、当時中学2年生の息子がこんなことを言いました。「お父さんに教えてもらうことはお母さんに教わったから、お父さんはいらなくない?」「お母さん、外でご飯食べるときは笑うのに、家では笑わないよね」「家で一緒に食べないのはおかしいよ……」。

そんな息子の言葉を聞き、「そうか、別々に暮らしてもいいんだ」と思えるようになり、すぐに離婚の手続きに踏み切りました。

中学生の息子と小学生の娘、親子3人で迎えた初めての冬。今までこたつは「貧乏くさい」と夫に拒否されていたので、この冬初めて出しました。こたつでみんな一緒に囲む鍋は格別です。

ある日、娘は外に出ると、数分後、椿の花を持ってきました。通学路の途中に落ちていたといいます。「可愛いコップに差してこたつの上に飾ったら、冬らしくない?」とにっこり。そういえば、もう何年も花を飾ることを忘れていました。

これからは親子3人の生活です。ささやかな毎日がもっともっと輝くよう、華やかな花束をお願いできませんでしょうか。

息子は中学生で料理が得意。家政科のある高校を目指しています。黄色い花が好きなようです。娘は小学校高学年で、ピンク色が好きです。どうぞよろしくお願いします。

  

花束を作った東信さんのコメント

いろいろと大変でしたね。家族3人での新しいスタートを彩る花ということで、椿の葉やつぼみをたくさん使い華やかにまとめました。

キーカラーは息子さんが好きなイエローと、娘さんが好きなピンクです。カーネーション、エピデントラム、ユリ咲きのチューリップはイエローとピンクの両方を入れています。チューリップの球根3つは家族3人の象徴。土に植え替えれば、ぐんぐん伸びて花を咲かせるはずです。

リーフワークには色の濃い椿の葉をたくさん使っているので、少し重さがある分、上部はやわらかい色の花でまとめて軽くしました。

お花は、そこにあるだけで人の心を明るくします。このお花が家族の暮らしを明るく照らしてくれますように。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

離婚して初めての冬 息子と娘、わたし自身に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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