花のない花屋

子連れの再婚、背中を押してくれた母に

  

〈依頼人プロフィール〉
浅山渚さん 30歳 女性
東京都在住
公務員

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3年前に夫と別れ、バツイチで6歳の子どもがいる私。良縁に恵まれ、この3月に再婚する予定なのですが……。一度目の失敗もあり、ここへきて不安に押しつぶされそうになっています。

再婚する相手も私と同じで子持ちのバツイチです。お互い境遇が似ているからか、私に対する理解があり、子どもとの関係も良好です。彼は私たち親子を一番近くで助けてくれるかけがえのない存在です。

ただ、過去の経験から結婚という形に臆病になっているのでしょう。先方の家族が私の家族と雰囲気がちょっと違ったりするだけで、大丈夫だろうか?と不安になってしまいます。

もちろん、こんな思いは彼にも子どもにも悟られないように過ごしています。でも、ふとしたことがきっかけで不安に押しつぶされそうになったある日、思わず母へ電話をかけていました。

結婚が怖いとか、将来が不安といった話は一切しませんでした。でも、母にはすべてお見通しだったのでしょう。私の話をじっと黙って聞くと、最後にこう言いました。「そんなに色々気にしなくても大丈夫」。

この母のたったひと言で、胸の中につっかえていた何かがすーっと取れました。この感覚、久しぶりに昔を思い出しました。子どもの頃も困っているときや悩んでいるとき、母にこうやって話を聞いてもらい、背中を押してもらっていたな……と。離れて暮らしてもう8年になりますが、母の存在の大きさを改めて感じました。

そんな母はこの2月に還暦を迎えました。お花の大好きな母に、還暦のお祝いと日頃の感謝、そして私自身の決意を込めて、特別な花束を贈りたいです。

母はパートをしながら、趣味でフラダンスを何年も習っています。気持ちが若く、洋服も私と共有していたりします。暖色系で華やかな感じが好みですが、「こんな花束はじめて!」というようなサプライズをしたいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

サプライズとなり、かつ還暦のお祝いと新しい生活への決意を込めた花……。どんな花束がいいだろうと考え、お母さまが趣味でやっているというフラダンスをヒントに、南国系でまとめてみました。

還暦なので、全部赤です。アナナス、グズマニア、アンスリウム、ヘリコニア、グレビレア、エクメアなどどれも硬くて個性的な形をしています。先端がブルーなのは、エクメアの実。なんともいえない南国らしい色の組み合わせです。

トップのインパクトがあるので、まわりのグリーンはバランスをとるためにルスカスをランダムに挿しました。ここが葉を重ねたリーフワークだと、どうしても小さくまとまってしまいます。

今回の植物はもともと水が少ないところで育つものなので、かなり長持ちするはず。みなさんで長く楽しんでくださいね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

子連れの再婚、背中を押してくれた母に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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