あゆみ食堂のお弁当

<25>年上の素敵な友人と、のんびり食べたい海の幸

  

〈依頼人プロフィール〉
幾井良子さん 52歳 女性
茨城県在住
パートタイマー

    ◇

私のライフワークは、絶版になってしまった本を国内外で復刊し、二度と絶版にならないよう守っていくことです。

あるとき、「禅」にまつわる絶版本の再販をしたいと思い、著者に連絡をとったところ、著者はすでに他界していました。そこで著作権を継承している親族の方にコンタクトをとり、再販の手助けをしてもらいました。その後、著作権継承者は亡くなってしまったのですが、その方が生前紹介してくれたのが、今回お弁当を贈りたい女性です。

御年85歳。若くして伴侶を亡くされ、女手ひとつでふたりの娘さんを立派に育て上げたというその人は、静かなたたずまいのなかにも、一本、とてもしっかりした筋が通っているよう。美術関係に造詣(ぞうけい)が深く、自宅に研究者の先生を招いて、一般の方向けに講座を開くなど、精力的に活動されています。

件の著作権継承者の方が、なぜ私と彼女を巡りあわせたいと思っていたのか、はじめはわかりませんでした。でも、実際にお目にかかり、その後自宅に招いていただいたり、昼食をごちそうになったりするうち、ふたりの共通点のようなものがわかってきました。

彼女のライフワークは、信仰や古代文字など、日本古来の知恵や文化を後世に伝えていくことです。それは私が貴重な文献を絶やすことなく、ずっと残していきたいという思いに通じるところが多分にあるからです。

彼女の博識さや、活動に対する熱意もさることながら、私が一番感銘を受けているのは、彼女の「生きる力」です。若くして夫を亡くしながらも、娘さんたちにしっかりと教育をほどこし、当時はとびきり高価であっただろうピアノを買い与えたそうです。現在、お嬢さんのうちのおひとりはピアノの先生とか。

85歳になった今でもしゃきしゃきと歩き、友人知人を自宅に招いては、お料理を振る舞っていらっしゃいます。その姿を見るにつけ、「ああ、私も頑張らなくちゃ!」と背中を押してもらっているような気持ちになります。母娘ほど年が離れてはいますが、私にとってはとても大切な、出会えてよかったと心底思える友人です。

今回、お弁当を作っていただきたいと思ったのは、若い頃から今日まで、いつも誰かのために料理を作り続けてきた彼女に、たまにはゆっくりと料理を食べてもらいたいと思ったからです。お嬢さんやお孫さんのために料理することが多いせいか、私たちに作ってくれる料理もコロッケやフライドポテトなど、若い人好みのメニューが多いように思います。ご本人は本当はもっとしみじみとした和食が食べたいのでは? なんて思ったりしています。

彼女のご実家は静岡県の下田にあります。何かの記事で、あゆみさんが伊豆のご出身だと知りましたので、ぜひ静岡のおいしい海の幸を使ったお弁当を教えていただけたらと思っております。これからいい気候になりますので、ぜひふたりでお弁当を持って、外でのんびり、おしゃべりをしながら食べたいなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

春の空気を感じながら、金目鯛の粕漬け焼きを

酒粕に漬けるときは、魚をガーゼで包むとほどよく漬かり、焼くときに焦げ付きません。西京焼きなどの場合も同じです


酒粕に漬けるときは、魚をガーゼで包むとほどよく漬かり、焼くときに焦げ付きません。西京焼きなどの場合も同じです

<献立>
さくら飯
金目鯛の粕漬け焼き
里芋の蕗味噌焼き
春キャベツと菜の花のおひたし
にんじんのたらこ和え
大根梅酢漬け
卵焼き

<あゆみさんからのメッセージ>
85歳の今でもはつらつと日々を楽しんでいらっしゃる女性。想像しただけで素敵な雰囲気が伝わってきます。そんなご友人に、今回はご実家があるという下田で水揚げされる金目鯛の粕漬け焼きをメインに、和風のほっこりするお弁当をイメージして作らせていただきました。

春のさわやかな野菜は、それぞれの風味を生かして薄味のおひたしに。蒸した里芋には蕗(ふき)味噌をのせて焦げ目つける程度に焼き、素材の味を楽しめるよう工夫しました。春らしく、ごはんは桜の塩漬けを混ぜ込んださくら飯に。お弁当の定番、誰かに作ってもらうととびきりおいしく感じる卵焼きも忘れずに。

春の空気を感じながら、ゆったりとした食事を楽しんでいただけますように。

■金目鯛の粕漬け
*材料(作りやすい分量)
金目鯛  2~3切れ
酒粕(板粕)  200g
日本酒  大さじ2
みりん  大さじ3
きび砂糖  大さじ2
塩  小さじ1.5

*作り方
1.金目鯛に塩少々(分量外)をふって、30分ほどなじませる。
2.酒粕をぬるま湯(分量外)に浸して柔らかくなるまで置いておく。
(最低でも30分くらいは浸けておくといい)
3.柔らかくなった酒粕と日本酒、みりん、きび砂糖、塩をフードプロセッサーに入れ、しっかりと攪拌する。
(フードプロセッサーがない場合は、少し時間がかかりますがすり鉢を使用)
4.3の粕床の1/2量を平たく伸ばしながらタッパーに敷き、ガーゼで包んだ1の金目鯛をのせる。さらに金目鯛全体を覆うように残りの粕床をのせる。

*4日後くらいからが食べごろです。魚焼きグリルで皮目がこんがりとするまで焼きましょう。ぜひおいしい酒粕を使って作ってみてください!

さくら飯/金目鯛の粕漬け焼き/里芋の蕗味噌焼き/春キャベツと菜の花のおひたし/にんじんのたらこ和え/大根梅酢漬け/卵焼き


さくら飯/金目鯛の粕漬け焼き/里芋の蕗味噌焼き/春キャベツと菜の花のおひたし/にんじんのたらこ和え/大根梅酢漬け/卵焼き

背筋が伸びた、すてきな女性をイメージして、上品な白木のお弁当箱を選びました。さくら飯のピンクや金目鯛の赤が映えて、きれいです


背筋が伸びた、すてきな女性をイメージして、上品な白木のお弁当箱を選びました。さくら飯のピンクや金目鯛の赤が映えて、きれいです

(ライター/小林百合子)

<24>好きな人と一緒に食べたい、花見弁当

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<26>春から初めてのお弁当。緑の野菜を克服してほしい

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