花のない花屋

今年だけ、兄妹4人全員が背負うランドセル

  

〈依頼人プロフィール〉
川崎有子さん 33歳 女性
千葉県在住
接客業

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4人の子どもたちと暮らすシングルマザーです。21歳で最初の子どもを授かり、長男が5歳のときに離婚してからというもの、たくさんの人に支えてもらってここまできました。

5歳だった長男は、この4月から小学校6年生に。長女は4年生で、発達障害のある次男は3年生、赤ちゃんだった末っ子の次女はいよいよ1年生です。今年1年間だけ全員がランドセルを背負います。

長男は、成績優秀で優しく、学校の先生にも「精神年齢が大人ですね」とよく言われます。「今月はお金が厳しいんだよねえ……」と私がつぶやくと、「じゃあ、夕飯はこうしたらいいんじゃない?」と提案してくれたり、子どもたちのお父さんのことをグチると、「まあそんなもんだよ」とこたえてくれたり。今では私のよき相談相手になりました。

長女は、そんなお兄ちゃんの陰に隠れがちですが、実は頑張り屋さんで勉強もお手伝いも一生懸命。私が仕事から帰ってくると、洗濯物を取り込んでくれていたり、ご飯を炊いておいてくれたり。「もう全部終わってるじゃない!」ということがしばしばです。さらにお風呂掃除もゴミ捨ても、下の子の面倒もみてくれる“お母さん”のような存在です。

次男は、運動神経はピカイチですが、いわゆるLD(学習障害)で、文字の読み書きが苦手。今までは、言葉で伝える前に叫び出してしまうことも多々ありましたが、学校に入ってからは落ち着いてきて、だいぶ言葉も読めるようになってきました。彼はいつも私に違う視点を教えてくれます。

一番下の次女は、とにかく甘えん坊。甘やかしすぎたのか、わがままし放題ですが、感受性が豊かで、私をいつも笑顔にしてくれます。
こんな4人の子どもたちは、生きる意味がまったくわからなかった私に、育児という使命を与えてくれました。そして、命がどれだけ愛おしくて、はかないものなのかということを教えてくれました。

我が家は今年、子どもたち全員がランドセルを背負うアニバーサリーイヤーです。これからもみんなで楽しく頑張って生きていくために、東さんに記念のお花を作ってもらえないでしょうか。

ただ、私は花を育てるのが苦手なので、育てやすい種類だとうれしいです。ドライフラワーの花束でもいいかもしれません。ちなみに長男は黒、長女はピンク、次男は緑、次女は青が好きです。子どもたちに見たこともないような花束を見せてあげたいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

この連載をやらせていただいていると、たびたび「女性はたくましいな」と尊敬の念を抱きます。苦労をしてもそれを乗り越え、前向きに生きている人がたくさんいるからです。女性の美しさはよく花にたとえられますが、もしかしたら、その前向きな生命力も花に似ているのかもしれません。

今回は、そんな川崎さんの前向きさと、お子さんたちへの愛、和気あいあいと暮らしているご家族にフォーカスを当ててアレンジをしました。

それぞれのお子さんの好きな色を教えてもらったので、すべての色を使っています。まず、長男が好きという黒は、ベルの形をしたフリチラリアとスカビオサ、ゼンマイ、多肉植物で表現。長女が好きというピンクは、カーネーションと、ガーベラ、ダリア、チューリップ。次男の好きな緑はラナンキュラス、ナデシコ、シキミア、パフィオペディラムで、次女の好きな青は、ルピナスとアイリスです。

黒、ピンク、緑、青という色をみたとき、「バラバラになっちゃうかな」と一瞬迷いましたが、予想以上にうまく合いました。花びらの形をなるべく主張が強くない、きめ細かい形を選び、全体をなじませたからというのもありますが、自分では絶対にやらない色の組み合わせで新しい発見がありました。僕もお子さんたちから学ばせてもらいました。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

今年だけ、兄妹4人全員が背負うランドセル

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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