花のない花屋

大切な友達へ 待ち望んだ妊娠、おめでとう

  

〈依頼人プロフィール〉
小山美紀さん(仮名) 40歳 女性
鳥取県在住
会社員

    ◇

2カ月前から一緒に旅行へ行く計画をしていた友人から、ある日電話がきました。「妊娠したみたいだから、旅行は難しいかも……」。私にとって、涙が出るほどうれしいニュースでした。

彼女と出会ったのは大学時代。大学も住む場所も違いましたが、発掘調査のアルバイトで出会い、もう1人の友達とともに3人で意気投合。以来、20年近く一緒に人生を歩んできました。それぞれ3人とも歩む道は違いますが、折々の旅行を楽しんだり、喜びも悩みも打ち明け合い、時を重ねてきた仲です。

彼女は8年ほど前に結婚しましたが、子どもはおらず、医学的に少し妊娠しにくい体質だという話を聞いていました。本人たちの力ではどうにもならないのに、「いつ子どもができるの」「なんでまだできないの」など、周囲からの心ない言葉で何度となく傷ついてきたのを知っています。それでも、どんな相手にも明るく、優しくいられる彼女の芯の強さにいつも勇気づけられていました。

彼女はいろいろな葛藤を抱えながらも、無理して不妊治療はしないという選択をし、子どもがいない人生と正面から向かい合って生きていました。そんな彼女を友人として誇らしく思っていましたが、今回のおめでたの報告は、とてもとてもうれしいことでした。

第一報で妊娠のよろこびを伝えるより、旅行のキャンセルを何度もわびるところも彼女らしいです。今までたくさんしんどい思いをしてきたと思うけれど、本当によかった! 心からのお祝いと応援の気持ちを込めて、東さんのお花を贈りたいです。人が人に花を贈りたいと思うのはこういう時なんだ! と、今回生まれて初めて思いました。

彼女は歴史が好きで、文化施設の受付スタッフをしています。また、歴史ボランティア活動もしていて、観光ガイドにも取り組んでいます。古いものを大切にする性格で、好きな色は若草色など落ち着いた色。でも、こういうときなので思いっきり華やかなお花でお祝いしたいです。カラフルで明るく、見ているだけで幸せな気分になるような花束をお願いします。

  

花束を作った東信さんのコメント

今回はおめでたいお話なので、祝祭感をテーマにゴージャスにまとめました。明るくしたかったので、暖色系の花を多めに選び、15種類ほどの花を使っています。

メインは中心に挿した大きなキングプロテア。これはドライフラワーにもなるので、花が枯れても記念にとっておくことができます。そのまわりにダリアやガーベラ、マリーゴールド、オーニソガラモ、バラ、ナデシコ、カーネーション、アンスリウムなどビビッドな色の花々をちりばめました。少しだけ紫色のトルコキキョウを入れ、明るい色の花をより引き立たせています。リーフワークも少し濃い色のグリーンの葉を選びました。

全体的に長持ちする花を選んだので、2~3週間はもつかと思います。ゆっくり過ごしながらお花を楽しんでくださいね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

     ◇

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

大切な友達へ 待ち望んだ妊娠、おめでとう

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

facebook

instagram

http://azumamakoto.com/

PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


膵臓がん乗り越え5年、この先も家族とともに

一覧へ戻る

心はそばに、祈りをこめて 胃がんのママ友へ

RECOMMENDおすすめの記事