花のない花屋

39歳、突然死で逝ってしまった最愛の夫へ

  

〈依頼人プロフィール〉
江川和代さん 40歳 女性
愛知県在住
介護福祉士

    ◇

2年前、最愛の夫が39歳で逝ってしまいました。いわゆる突然死というものです。インフルエンザにかかり4日目に熱が下がったものの、まだ体調が少し悪いな、と言っていた朝。「胸が苦しい」と言うので病院へ行こうと準備をしている間、ものの20分の出来事でした。横になっていた彼はあっという間に心停止となり、私と大切な子ども2人を残して息絶えてしまいました。数分前まで普通に話していたのに……。こんなにあっけなく人は死んでしまうのか、と信じられませんでした。

この2年間は本当につらく、自分でもよく生きてこられたと思います。彼は大事な大事な人でした。お互い大好きな野球を通じて知り合い、ずっと私を大切にしてくれました。結婚10年目には安月給にもかかわらず、小さなダイヤモンドのネックレスを贈ってくれ、「11年目も仲良く過ごそうね」と約束したばかりだったのに……。11年目を迎える前に逝ってしまうなんて信じられません。

彼は元気のいいスポーツマンで友達も多く、たくさんの仲間に囲まれていました。小さな会社の営業マンで、社長からの信頼も厚く頼りがいのある人でした。2人の子どもにも恵まれ、私たちは幸せな日々を過ごしていたのに……。

「お前たちが笑ってくれることが、俺の幸せだから」と口癖のように言っていた彼。何よりも家族を一番大事にする人で、たくさんの愛をもらってきた気がします。そんな夫に私は何かしてあげられたのかな……。私ばかり幸せをもらってしまっていたんじゃないかな……そんなことばかり考えてしまう時期もありました。

今は、最大級の愛を伝えたくて、毎日仏壇にお花を飾っています。手向けたお花はドライフラワーにして、月命日にそれを使ってボタニカルキャンドルを作っています。

そんな夫に手向けるお花を東さんにもつくってもらえないでしょうか。しんみりしたお花ではなく、気分が少しでも明るくなれる花束を……。ドライフラワーにもできる花を1本でも入れてもらえたらうれしいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

実は、僕もご主人と同じ39歳です。しかも野球が大好きな野球少年でした。小さい子どももいるので、思わず自分と重ね合わせてしまい、ひとごととは思えないエピソードでした。

ご希望通り、ドライフラワーになる赤いキングプロテアを中心に挿しています。また仏前に供えるとのことでしたので、あまり長すぎたり、大きすぎる花は避け、飾るのに邪魔にならないアレンジにしました。

とはいえ、地味にまとめるのではなく、“明るい花束”になるよう、ビビッドな色の花をたくさん使っています。主な花材は、ジニア、ガーベラ、カーネーション、ダリア、ガーベラなどの花らしい花。“花”と言ったときに、誰もが思い浮かべるような形の花をたくさんちりばめました。アクセントに、グズマニアやトリトマといった少し変わった形の花を加えています。

リーフワークはドラセナの“ビロード折り”。赤と緑色のコンビネーションが中の花を引き立てています。

きっとまだ深い悲しみを抱えていらっしゃると思いますが、少しでも前を向いて生きていけますよう応援しています。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

39歳、突然死で逝ってしまった最愛の夫へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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