花のない花屋

<178>太陽のような長男、旅立ってしまった次男へ

  

〈依頼人プロフィール〉
有村聡子さん(仮名) 43歳 女性
四国在住
自営業
    ◇
 私は夫と23歳で結婚しました。すぐに子どもが欲しかったけれどなかなか授からず、不妊治療を受けての妊娠。一卵性双生児でした。

 でも、しばらくすると1人の子には心音がないことがわかり、その子は難しいだろうとのこと。さらに5カ月を過ぎた頃には、「羊水過多症」と診断され、即入院しました。羊水を抜く手術を受けましたが、抜き始めた5分後に陣痛が来てしまい、すぐ中止に。

 羊水過多症の場合、子どもには障害がでることもあるとのことで、お医者さんには「今回は諦めて次の子どもを考えた方がいい」と告げられました。とはいえ、エコーで見る赤ちゃんは元気に動いています。「障害を理由にこの子たちの命を奪っていいのだろうか……」と悩み、大きな病院に転院して、26週という早産で2人を産みました。体重860グラム。犬の赤ちゃんほどの大きさでした。

 次男は生まれてすぐに天国へ旅立ち、長男は7カ月の入院生活を経て退院しました。おそらく耳は聞こえておらず、脳の中枢にダメージがあるので呼吸の問題があり、たぶん一生寝たきりの生活になるだろう、と宣告されました。

 それからは、1歳は超えられない、3歳は超えられない、小学校入学の夢は持たないように……と様々な宣告を受けながら、何度も手術を繰り返し、今年、17歳の高校3年生になりました。

 今も言葉をしゃべれず寝たきりだけれど、3歳から入所している施設と養護学校で毎日ニコニコと笑顔を振りまき、病院の先生や看護師さん、学校の先生に大切にしてもらっています。彼の存在はまわりを明るく照らしてくれて、どんなに嫌なことがあっても、私は彼の顔を見ると、体中の毒気が抜けていきます。

 入退院を繰り返し、苦しそうにしている息子を見るたびに、「私が諦めずに産んだからだ」「私のエゴのせいだ」と自分を責めるばかりでしたが、今は、この子の人生は幸せだと心から思えます。

 生まれてきてくれてありがとう。私と出会ってくれてありがとう。みんなに支えられて生きているんだと気づかせてくれてありがとう。あなたは私たち家族の太陽です。

 そんな太陽のような長男、そして生きられなかった次男の、大切な双子ちゃんたちに、見るだけで楽しくなるような花束を作ってもらえないでしょうか。

 障害を持ったからといって、すべてが不幸ではありません。その人、その人の花があるのだと思います。天国から見ても、一瞬で見つけられるような、太陽のような花束をお願いします。

  

花束を作った東さんのコメント

 有村さんの前向きな明るさと、太陽のような息子さん、天国から見てもぱっとわかるような花束……そんなイメージを頭に描き、アレンジしました。
 メインで使ったのは、この時期の代表的な花、ヒマワリです。いろいろな種類がありますが、これはスタンダードな中輪であるビンセントネーブルという種類。だいたい20本ほど使っています。ヒマワリは黄色というイメージがあるかもしれませんが、意外とオレンジに近い落ち着いた色をしているもの。なので、今回はヒマワリのまわりにレモンイエローのカーネーションを並べ、さらに華やかに、外へ広がっていくようにアレンジしました。
 リーフワークはドラセナの葉。立体的な三角折りにして、大ぶりなヒマワリの花とバランスを取っています。
 イエローはビタミンカラーの代表格。見ているだけでパワーをもらえます。ご家族みんなで楽しんでくださいね。

<178>太陽のような長男、旅立ってしまった次男へ
  
  
  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

<178>太陽のような長男、旅立ってしまった次男へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

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