花のない花屋

アラフィフで大学生 頑張る妻に尊敬とエールを

  

〈依頼人プロフィール〉
髙木英雄さん 47歳 男性
神奈川県在住
会社員

    ◇

妻は今年48歳。世間的には十分“中年”ですが、この4年間、鍼灸(しんきゅう)師の国家資格習得のために、20代や30代の若者に交じって4年間大学に通い続けました。

もともと妻は会社勤めをしていましたが、出産を機に専業主婦に。東洋医学には興味があったようで、鍼灸のクリニックに通っていましたし、中医学の講座などにも時々行っていました。とはいえ国家資格を取るというのは別の話です。気力も体力も、記憶力も衰える中で、10科目以上の学科と実技を学ぶというのは大変なこと。でも、妻は40歳を過ぎてから学校へ通うことを決めました。

最初の頃は好きなことが学べるうれしさと若い人たちとの交流が楽しかったようで、よろこんで学校へ通っていましたが、時間が経つにつれ学習面や世代間のギャップに悩み始めました。また、高校生の息子がいるため、家事と学業の両立も大変で、最終学年にあがるときには心身ともに疲れ果て、1年間休学しました。そばでみていても気の毒なほどで、このまま退学するのではないかと思いましたが、翌年なんとか復学。

その後は文字通り自分にムチを打つように勉強していました。夜中の3時過ぎまで試験勉強をし、翌朝早くから高校生の息子のお弁当を作る姿を見たときは、本当に頭が下がる思いでした。

お陰でクラスでもトップの成績で卒業を果たし、先日国家試験にも無事合格。人間、何かを始めるのに遅すぎることはないと教えられた気がします。

今は大学で研修をしており、実地まであと1、2年はかかります。まだ大変な日々は続きますが、妻の頑張りに尊敬の念とエールを込めて花束を贈りたいです。ピンクやオレンジなど、かわいらしく明るい雰囲気のアレンジでお願いします。

  

花束を作った東信さんのコメント

久々に来た、男性から女性へ贈るお花のオーダー。こういうのは燃えますね。いくつになっても頑張る妻を応援するお花、とてもいいと思います。

“ピンクやオレンジなど、かわいらしく明るい雰囲気で”というご希望通り、色とりどりの明るい花を集めました。メインに使ったのは、ユリの原種であるオニユリです。可憐(かれん)でありながらどこか強さのあるたたずまいが奥さんに似ているのでは、と思い中心に挿しました。

そのほかに使ったのは、アジサイ、スプレーバラ、ダリア、エピデンドラム、クルクマソウ、セルリアなど。ポイントに、動きのあるグリーンベルをところどころに入れました。リーフワークはクリスマスローズとヒカゲです。パステル調の花を引き立てるため、少し薄めのグリーンを選んでいます。ナチュラルなガーデンテイストにするため、あえてランダムな感じを残しました。

まだあと2年ほど研修期間があるとのことですが、応援してくれるご主人がいるのは心強いですね。それにしても、日本の男性は、もっと女性へ花を贈ればいいのにと思います。お花をもらってよろこばない女性はいないはずです。

  

  

  

  
(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

アラフィフで大学生 頑張る妻に尊敬とエールを

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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