花のない花屋

いろいろあったけど、義母に贈りたい

  

〈依頼人プロフィール〉
佐久間絢子さん 47歳 女性
東京都在住
自営業

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義母は今年83歳。私の主人が幼い頃に離婚し、女手一つで息子を大学まで出し、立派に育ててきました。気丈で独立心が強く、これまで何でも自分で決めて生きてきました。今も私たちの家の近所で一人暮らしをしています。言い換えれば、人に頼ったり甘えたりするのが苦手。一人で生きていくために世の中と戦ってきたような人です。

そんな義母に今年7月、病気が見つかりました。昨年の秋ごろから体調が優れず、あちこち病院に行き、何度か検査を受けてようやく見つかったのが、進行したがん。年齢を考えると、抗がん剤は普通の人の半分くらいしか使えません。いろいろ考えた結果、本人はつらい抗がん剤治療は希望せず、痛みなどを抑える対処のみで積極的な治療はしないことになりました。

結婚した頃は私と義母もいろいろありましたが、最近はすっかり丸くなり、病院の付き添いなども「迷惑かけて悪いねえ」と言ってくれます。

そんな、一人で頑張って生きてきた義母へ東さんのお花を贈りたいです。彼女はお花や植物が大好きで、今もベランダのプランターで植物を育てています。これまでもお正月や母の日にお花を贈っていましたが、いつもとてもよろこんでくれました。病気がわかって心細いであろう今、東さんの美しい花束を持って行ったら、部屋も華やぎ、よろこんでくれると思います。

義母は編み物が得意で、若い頃は毛糸の帽子などを手編みして生計を立てていた時期もあります。以前、丸い毛糸のボンボンのようなキャットテイルが好きだと言っていたのを聞いたことがあります。気持ちが華やぎ、いやされるようなお花をお願いします。匂いに敏感なので、あまり匂いの強くないものでまとめていただけるとうれしいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

リクエスト通り、“ポンポン”をキーワードにアレンジしてみました。

外側にはグリーンの丸いナデシコを敷き詰め、内側にはイエローとグリーンのピンポンマム、千日紅、ビロードのような質感のジニア、花弁が内側にまるまったポンポンダリア、マリモという珍しい種類のグリーンのガーベラを挿しています。このガーベラは一見花には見えない、かなり珍しい種類です。

すべて丸い花でそろえ、リズムよく挿していきました。強い色も入っていますが、全体的には若々しすぎず、落ちつきすぎず、ちょうどいいバランスに仕上がったかと思います。

千日紅はそのままドライフラワーとしても楽しめます。全体的に持ちもいいアレンジですので、じっくりと楽しんでくださいね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

いろいろあったけど、義母に贈りたい

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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