こだわり派の逸品

自分だけのノートやレターセットで「書くことを楽しく」/カキモリ

現在カスタムできるノートは、サイズ二つ、表紙60種以上、中紙30種以上。リング、留め具なども選べる。1冊あたり800円から。目の前で製本までの様子が見られる。製本は20分程度だが、休日の混雑時には多少時間がかかってしまうことも

現在カスタムできるノートは、サイズ二つ、表紙60種以上、中紙30種以上。リング、留め具なども選べる。1冊あたり800円から。目の前で製本までの様子が見られる。製本は20分程度だが、休日の混雑時には多少時間がかかってしまうことも

表紙と裏表紙、そして中紙の種類はすべてこの棚から選ぶ。表紙類は、皮、コットン、紙など、さまざまな素材とデザインが常時60種類以上が置かれている。季節限定のデザインもあるので要チェック

表紙と裏表紙、そして中紙の種類はすべてこの棚から選ぶ。表紙類は、皮、コットン、紙など、さまざまな素材とデザインが常時60種類以上が置かれている。季節限定のデザインもあるので要チェック

製本の留め具類は三つのタイプがある。13色から選べるゴム留め、8色の皮革と7色のひもから選べる封緘(ふうかん)留め、8色から選べる皮革のボタン留めといった具合だ

製本の留め具類は三つのタイプがある。13色から選べるゴム留め、8色の皮革と7色のひもから選べる封緘(ふうかん)留め、8色から選べる皮革のボタン留めといった具合だ

オリジナルレターセットをさらに充実させていく予定。名入れなど、カスタムサービスのバリエーションも強化するそうだ

オリジナルレターセットをさらに充実させていく予定。名入れなど、カスタムサービスのバリエーションも強化するそうだ

特注のかわいらしい小瓶に入ったオリジナルのインク。上/ドイツのペンメーカーによる「カキモリ」モデルの〈ローラーボールペン〉(1728円)、下/セーラー万年筆による「カキモリ」モデルの〈透明軸の万年筆〉(3240円)。

特注のかわいらしい小瓶に入ったオリジナルのインク。上/ドイツのペンメーカーによる「カキモリ」モデルの〈ローラーボールペン〉(1728円)、下/セーラー万年筆による「カキモリ」モデルの〈透明軸の万年筆〉(3240円)。

軽井沢を拠点に活躍する造形作家、藤田素子さんによるガラスペン。ガラス職人として修行したドイツのラウシャ村で製造されたガラス素材を使っている。27,000円~

軽井沢を拠点に活躍する造形作家、藤田素子さんによるガラスペン。ガラス職人として修行したドイツのラウシャ村で製造されたガラス素材を使っている。27,000円~

古い雑居ビルの1階に店を構える「カキモリ」。オープンした6年前までは、この周辺のビルは空き家だらけだったという。外観のシンプルな印象どおり、店内も無駄のないミニマルな空間が広がる

古い雑居ビルの1階に店を構える「カキモリ」。オープンした6年前までは、この周辺のビルは空き家だらけだったという。外観のシンプルな印象どおり、店内も無駄のないミニマルな空間が広がる

2014年9月にオープンした隣接のインク専門店「ink stand by kakimori」。現在、諸般の事情でクローズしている。11月から営業再開の予定だ

2014年9月にオープンした隣接のインク専門店「ink stand by kakimori」。現在、諸般の事情でクローズしている。11月から営業再開の予定だ

近未来の実験室のような空間では、好みに合わせた色を調合し、自分だけのインクを作ってくれる

近未来の実験室のような空間では、好みに合わせた色を調合し、自分だけのインクを作ってくれる

店主の広瀬琢磨さん。群馬県の実家は、先々代から文具店をしていたという。自身は大学は理系に進み、外資系医療機器メーカーで3年働いた。「文具店で育ってきたので、自分で商いをするなら、どんなカタチがあるかと考えたときに、このお店のコンセプトを思いつきました」

店主の広瀬琢磨さん。群馬県の実家は、先々代から文具店をしていたという。自身は大学は理系に進み、外資系医療機器メーカーで3年働いた。「文具店で育ってきたので、自分で商いをするなら、どんなカタチがあるかと考えたときに、このお店のコンセプトを思いつきました」

 問屋や町工場が点在する東京・台東区の蔵前周辺は、昔から「ものづくりの街」として知られる。ここ数年は、クリエーターがビルの空き室をオフィスに再利用したり、小資本によるインディペンデントなショップが続々オープンしたりと、新たなトレンドエリアとしても話題だ。

 6年前に誕生した文具店「カキモリ」は、その先駆けとなったショップ。カスタムオーダーで作るノートや好みの色を配合して作るインクなど、自分だけの「オリジナル文具」が購入できるとあって、国内はもとより海外からの観光客にも人気が高い。

 「メールやSNSなど、今後、日常生活の中でIT化が進めば進むほど、『紙に書くこと』の意味はさらに増していくはず」と話すのは店主の広瀬琢磨さん。ちなみに、「カキモリ」とは、「書人」の当て字から名付けたそうだ。

 蔵前は、かつて多くの職人が働く文具製造の集積地でもあった。大学ノート専門の老舗「ツバメノート」の本社もじつはこの周辺にある。広瀬さんはそうした背景を生かして、この地域での開業を決めた。

 お店の外観をガラス張りにしているのは、ノートの製本作業が通りからも見られるように。「いわゆる手打ちのそば屋形式ですね」と言って、広瀬さんは口元をすこし緩めた。スピードと合理性が求められる時代に、あえて「書くこと」を通して、忘れていた「時間」に気付かされる、そんなショップかもしれない。(文・宮下 哲)

    ◇

――オープンした当初、地元の反応はいかがでしたか。

 「蔵前の職人さんとお客さんとをつなぐショップを作ろう」と考えてはじめたのですが、最近は近所の方が蔵前土産として買ってくれたり、「こういうお店があるんだよ」と周りに紹介してくれたり、6年経ってようやく地元になじんできたかなと感じています。職人さんともだいぶ打ち解けてきました。最初の頃は「こんな仕事、受注できるわけないだろう!」とよくしかられましたよ。

――お客さんの反響はいかがですか。

 仕事をされている女性が比較的多いですね。ノートは、中紙を入れ替えて繰り返し使えますので、裏表紙の名入れの皮革部分だけを残して、あとはすべて入れ替えということもできます。先日も「愛着が湧きすぎて、このノートなしには仕事ができない」という女性のお客さんがいらっしゃいました。既成のノートには「使い続ける」というイメージがないので、こういうノートに出会えてうれしいという声は多いですね。あと最近はギフトとしても人気で、相手のことを思いながら作ったノートは、想像以上に喜んでもらえるようです。

――万年筆もたくさん置かれています。

 若い方々のほうが万年筆に対する興味が高いと思います。なかにはいきなりガラスペンを購入する方もいます。万年筆好きが、さらにニッチなものが欲しくなってガラスペンにはまるというのがこれまでのパターンでした。でも、若い方々にとっては、書くこと自体が特別なことだから、万年筆だろうとガラスペンだろうと、面倒くささは同じなんですね。一時期はガラスペンの市場は衰退の一途でしたが、いまでは若い作家さんも増えて、フル稼働で生産しています。

――置かれている万年筆はすべて新品ですか。

 はい。いわゆるヴィンテージや蒔絵(まきえ)などの高級品は扱っていません。3千円台から高いもので3万円くらいです。なぜならお店自体が小商いですし、そういったモデルは、ここでなくてもほかの大手文具店でいくらでも手に入りますから。比較的安価で、ボールペンと同じように自由に書き心地を試せるのがこの店の良さだと思っています。「最近、紙に文字を書いていない」という方に、書くきっかけを提案できればうれしいですね。

――主力商品はやはりオリジナルノートでしょうか。

 今は売り上げの5割くらいがオリジナルノートです。ただ今後は「手紙」にも注力していこうと、10月中旬から下旬にかけて店内のリニューアルを考えています。やっぱり「ラブレーターならOKだけど、LINEなら既読スルー」という感覚はみなさんあると思います。手紙だとちゃんと読んでくれるし、思いも伝わりやすい。今後は、レターセットのバリエーションを増やすなど、提供できる仕組みをいろいろ検討していきます。

――オープン当時と今とでは、心境的に何か変わったことはありますか。

 「楽しく書く」という基本的なコンセプトは変わりません。あえて言うなら当時は、書くことで「日常生活を楽しくしよう」という提案をしていましたが、オープンしてから6年の間に、日常はさらにIT化されてしまった。iPad用のアップルペンシルがどんどん進化して、もしかすると「手書き」という行為自体もIT化されるかもしれない、などとも思います。それはそれで仕方ない。

 そんな背景もあって、ここ数年は「たまには『紙に書く』という特別な時間を作りませんか」という提案に変えつつあります。あらためて「紙に書く」ということの価値や、書き残していくことの大切さを知ってもらいたい。人間って、データとして残っていても絶対に見直そうとしませんが、ノートや手紙だと見直します。そこの部分をしっかり提案していこうと思っています。

    ◇

カキモリ
住所:東京都台東区蔵前4-20-12
営業時間:12時~19時、11時~19時(土日祝日)月休(祝日を除く)
http://www.kakimori.com/

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