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ワインのビジュアル本を、ゆっくりと。『ワインは楽しい!』ほか

ワインのビジュアル本を、ゆっくりと。『ワインは楽しい!』ほか

撮影/馬場 磨貴

世の中の多様なニュースがざっくりと3行でまとめられているようなものをスマートフォンの画面上に見つけ、このような効率的な情報収集の手立てを提供してくれる人がいるのはまことに喜ばしいことである、たくさんの情報をインプットできる自分は判断力のある利口な人間になれるだろう、などと感じて数年。今の自分は紙媒体を主な情報源としていた当時に比して、すっかり愚鈍になってしまった。

たぶん媒体との接し方に問題があるのだろうけれど、だれが正しい、何が美しい、何がおいしい、などという単純ならざる事柄を自分なりの情報として持つためには、やはりしっかりとした読み込みが必要なのだ(と、鈍ってしまった頭でもようやく気がついてきた)。特に、味わいにかかわる複雑な内容を飲み込むには、ゆっくりとした読書が自分にとって望ましいと思う。

フランスでベストセラーとなったワインの教科書の日本語版が『ワインは楽しい!』というタイトルで出版されて、このテーマの書籍としては異例の売れ行きを見せている。

「ワインは難しくない」といった意味合いの原著が売れているということに、フランス人でもみんながワインについて詳しいわけではない、という当たり前の事実を再認識させられてなんとなく安心してしまうのは、自分のコンプレックスの表れなのかもしれない。だが、食料廃棄率の高さなんかを考えると、日本に暮らしている自分はまだまだコンプレックスを感じていたほうが良いかもしれない。

同書はイラストと文章で分かりやすく解説されているものの、ワインの味わいや楽しみをいたずらに単純化しているわけではなく、テイスティングからぶどう品種、セラー作りまで、複雑だからこそ面白いワインの魅力が、初心者にもわかるようになっている。

近年、英語圏やフランス語圏でワイン関連のビジュアル本が数多く出版されているが、フランスの大手出版社アシェットのシリーズ『L’Ecole Hachette du Vin』も、同様にイラストと文章を組み合わせた教本である。

ワインのビジュアル本を、ゆっくりと。『ワインは楽しい!』ほか

『L’Ecole Hachette du Vin: Les accords mets et vins』Olivier Bompas(著) Hachette Pratique刊 4,030円+税

ワインのビジュアル本を、ゆっくりと。『ワインは楽しい!』ほか

『L’Ecole Hachette du Vin: Ma première degustation』Pierre Casamayor(著) Hachette Pratique刊 4,030円+税

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『L’Ecole Hachette du Vin:Les cépages』David Cobbold /Sebastien Durand-Viel (著) Hachette Pratique刊 4,190円+税

こちらは 『Ma première degustation』(ワインテイスティング)、『Les accords mets et vins』(料理とワインのペアリング)、『Les cépages』(ぶどう品種)などテーマごとに分かれていて、より情報が細やかになっており、知識をさらに深めていきたいという人も満足できるだろう。

自分が口に入れるものが、どこでどのように作られ、どのような特質を持つのか、そうしたことについての知識があるのとないのでは、人生の味わいにも差が出てくるかもしれない。

(文・後藤奈岐)


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