上間常正 @モード

「ユイマナカザト」と「レキオ」の服の新しさ 東京コレクション

ユイマナカザト(2017年春夏東京コレクションより/大原広和撮影)


ユイマナカザト(2017年春夏東京コレクションより/大原広和撮影)

ユイマナカザト(2017年春夏東京コレクションより/大原広和撮影)


ユイマナカザト(2017年春夏東京コレクションより/大原広和撮影)

レキオ(2017年春夏東京コレクションより)


レキオ(2017年春夏東京コレクションより)

レキオ(2017年春夏東京コレクションより)


レキオ(2017年春夏東京コレクションより)

 日本発のトップモードの新作を発表する2017年春夏・東京コレクション(アマゾンファッションウィーク東京)が先週、東京の渋谷ヒカリエを主会場に開かれた。日常の仕事の事情などでほとんどのショーの様子は主催者のネット速報で知るしかなかったが、いくつかの実際に見ることができたショーはとても印象深かった。パリやミラノなど欧米のそれとは異なるファッションの可能性を感じたからだ。

 表参道ヒルズの地下スペースで開かれた「ユイマナカザト」の新作は、暗闇の中で光が当たると幻のように服が浮かんでくるという見せ方だった。光が強くなるにつれて、服の色がさまざまに変化して虹色にきらめく。夜空に妖しく揺れるオーロラのようだが、それでいて登場したドレスやポンチョはどれにも強度に満ちた存在感がある。ブーツやハイヒールも、同じような輝きと確かさを感じさせる。

 回転する台座の上でポーズをとるモデルは女性だが、硬い塑像(そぞう)のように動かず、シンプルなヘアメークもあって女性らしさはほとんど感じさせない。3Dプリンターで打ち出したような透明な素材の女性の腕が義手のように服に添えられているが、それは「女性らしさ」が生身とは離れた不自然な作りものだということを示しているようにも思える。

 服の素材は「ホログラムフィルム」という合成樹脂で、メーカーに頼んで独自に開発したもの。半透明だが光を当てるときらきら光って色がさまざまに変わる。そのフィルムをクシャッと小さく丸めた塊を一つずつ手でつないで服を形作ったという。「江戸切子」の技法を参考にしたとのことで、遠くから見ると繊細なカッティングの江戸切子みたいな質感と模様が服から感じ取れる。

 普通っぽいが細部に凝ったラグジュアリーな服、機能性と価格が低レベルで均衡したファストファッション。そんな服が幅を利かす中で、日本伝統の物作りとデジタルテクノロジーを融合して服の新しい存在感を示したユイマナカザトの服には、服の未来を示す強い力が潜んでいるようだ。

 発表作にはどれも、たった一人のために作られるオートクチュール(高級仕立服)のようなオーラがある。しかしデザイナーの中里唯馬が目指しているのは、「多くのたった一人」に向けた服作りだろう。そのためには服がすべて手作りの一点物だった時代の知恵と現代のハイテクノロジーの力が必要だ、そして着る側と作り手側の十分な対話も欠かせない。彼の服からは、そんな服作りへの強い意志がうかがえた。

 沖縄の素材を使って沖縄で作った服。現地で開いた新作のショーを前回から映像で東コレに参加している「レキオ」。そのショーを今回は沖縄で見た。琉球藍で染めた独特な味のある藍のバリエーション、福木の葉による鮮やかだが温もりのある黄色、ハイビスカスの味わい深い生成り、パイナップルの茎を焼いた炭で染めたニュアンスのあるグレー……。そんな素材を使ったシンプルだがゆったりとしたドレスが、沖縄の広い空の夕日を浴びて風をはらんで芝生の庭のランウェイで揺れた。

 会場は、戦後に米軍の最高幹部のために作られた住宅地。今は民間の手に渡っているが、1軒の敷地が約500坪もある邸宅が並ぶ。旧コザの米軍基地に近い高台で、両側に日本海と東シナ海が見渡せる。会場選びに困って、たまたま協力スタッフの父親が所有している家を使うことになったのだという。ショーの後、広い居間でスタッフやモデル、客たちが特注メニューのカクテルを飲みながら遅くまで語り合った。こんな豪華な住宅地があることは知らなかったのだが、沖縄にはそんな現実もあるのだ。

 デザイナーの嘉数義成は、沖縄の素材開発、特に消滅しかけている琉球藍の栽培育成に取り組んでいる。産業として継続・発展させるためには大規模な栽培が必要で、そのため県などに働きかけすでに数ヘクタールの有休国有地の開発を進めている。「ファッションの基本は農業です」と嘉数は語る。農業を支えるのは風土と結びついた伝統技術、そしてそれを現代と未来につないでいくためにはハイテクノロジーの力が必要だ。

 「ユイマナカザト」と「レキオ」は見た目には全く違うが、底では深く共通していて、それが新しいファッションを生み出すかもしれない力を感じさせるのだと思う。

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PROFILE

上間常正

ジャーナリスト、ファッション研究者。1972年、東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社。記者生活の後半は学芸部(現・文化くらし報道部)で主にファッションを担当。パリやミラノなどの海外コレクションや東京コレクションのほか、ファッション全般を取材。2007年に朝日新聞社退社、文化学園大学・大学院特任教授(2019年3月まで)としてファッション研究に携わる。現在はフリーの立場で活動を続けている。

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