このパンがすごい!

麻布十番の新星、食べるもの食べるもの「すごいパン」 / コメット

フォカッチャ


フォカッチャ


コメット


コメット


バゲット


バゲット


クロワッサン


クロワッサン


店内風景


店内風景


小林健二さんと奥さん


小林健二さんと奥さん


外観


外観

コメット(東京都)

 流星のように突如麻布十番に現れた新店コメット。食べるもの食べるもの「すごいパン」の連続、東京を代表する存在へ躍り出る予感がしている。

 フォカッチャの衝撃。かりかりの皮とじゅるっとくる中身からできたそれは、北海道産小麦「キタノカオリ」のポテンシャルを余すところなく引き出したパン。散らした赤たまねぎが、香りと、飴(あめ)色たまねぎの甘さを運ぶ。皮もまた甘さを発揮。特に鉄板に接した対面は、いわば麦おこげというべき、濃厚な香ばしさと甘さがある。一方で、中身はオリーブオイルと水を小麦がたっぷりと抱き込んで、噛(か)んだ瞬間ちゅるちゅると麦の汁が舌を濡らすわ、とろとろと旨味が舌を覆うわ。食べる者を虜(とりこ)にして止まらない。

 コメットのシェフは、パリの世界的な名店「デュ・パン・エ・デジデ」でスーシェフを務めた小林健二さん。当時、フランス最高の小麦を扱っていた彼の基準でも、キタノカオリは驚くべき小麦だという。

「はじめて使ったときびっくりするぐらいおいしいなと思いました。このフォカッチャは、キタノカオリだからできる。キタノカオリが『こう作ってくれ』と言っているように作るとこうなります。吸水を多くして、パンチ(発酵の途中で生地に伸びる力を与える工程)でつないでいくと、個性的なうまいパンになる。他の粉では代わりがきかないような」

 大型の食事パン「コメット」は、この店のシグニチャー。ファーストインプレッションは強烈だった。おいしい新米を買って米びつに入れるときのような、清冽(せいれつ)で、強烈な米っぽい香りが漂いだしてくるのだから。たまらず噛みつく。ぴぴっ。噛んだ瞬間、小鳥が鳴くような音がした。このパンもしっとりであるゆえに、果実を噛むみたいに、口の中に麦のジュースがあふれてくる。皮はかりかりと、これも音高く鳴る。油脂は入らないのにオイリーで、肉ではないのに分厚い旨味に満ちている。皮をおかずに中身をごはんとして食べる感覚。この並外れた旨味とジューシーさはどのように作られるのか。

「発酵に時間をかけるということ。ゆっくりつないで、高温で焼く。大きく焼けば、基本おいしいですから。お肉といっしょですね。(ローストビーフのように)大きく焼いた肉には、薄切りの肉を焼く焼肉とはまたちがうおいしさがある。パンの香りの7~8割は皮に入っています。大きく焼けば皮も厚くできますし」

 驚くべきは、噛めば噛むほど、舌はどんどん甘くなり、鼻は風味であふれ返る奥の深さ。さらに特筆すべきは、麦の風味に立ち混じっていたお米のような香り。国産小麦ならではのものと思っていたが、後で小林さんに「米ぬかをブレンドしている」と聞いた。「コメット=米と」。みずみずしさと日本人のDNAに刻まれた好ましいフレーバーをまとって、日本のお惣菜と日本人の舌に寄り添おうというのだ。大型に焼いた食事パンをみんなで切り分けて食べる文化を、日本に根付かせようというコンセプト。そこには、国産材料を使うことで日本の田畑を守りたいというでっかい気概まで込められている。

 紙数が尽きた。すごいパンはまだまだとどまらない。バゲット、クロワッサンという基本アイテムにこそ、小林さんのパン職人としての並外れた技量は現れているが、それはまたいつか書くことになるだろう。ともあれ、東京から世界に発信する超注目株の登場をよろこびたい。

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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