花のない花屋

がん闘病中の母から、子育てをがんばる娘へ

  

〈依頼人プロフィール〉
金子梨枝さん 52歳 女性
広島県在住
会社員

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2カ月前に娘が二人目の子どもを出産しました。胎盤の病気で8カ月での早産でした。本当なら私が産後の面倒を見てあげたかったのですが、私は昨年のどのがんが見つかり、娘の出産時はちょうど入院中。体を動かすこともできませんでした。

抗がん剤と放射線治療をして一時はがんも消えたのですが、今年になって再発。20時間にもおよぶ外科手術を受け、2日間も生死の境をさまよったそうです。妊婦の娘と3歳の孫娘には大きい傷を見せるのは刺激が強いから、と面会には来させませんでした。

無事に退院しましたが、やはり体に負担がかかり思うように動けません。孫娘のお守りくらいしてあげたら……と思いますが、体力がついていかないのです。本当に役に立たない母親だと自分で情けないです。でも、娘は「お母さんが生きてくれるだけでうれしい」と言ってくれます。

今は長女の赤ちゃん返りがひどく、夜も眠れない日があるようですが、娘は「大変だけど、みんなで一緒に暮らせるのはうれしいから頑張る」と言っています。

そんな娘へ、何もしてあげられないけれど、せめてエールを込めて花束を贈りたいです。娘は27歳の専業主婦。今は子育てで自分にかまう時間はないようですが、本来は昔からピンクやフリル、レースなど、かわいらしいものが大好きな子でした。小さい頃からマリーアントワネットに憧れていて、結婚式もドレスに傘を差して入場したほど。ピンクメインで、女子力がアップするようなお花をお願いします。

  

花束を作った東信さんのコメント

ピンクとフリルをキーワードにかわいらしくまとめました。また、マリー・アントワネットがお好きということでしたので、ちょっとアンティークっぽい茶色いセダムを入れ、大人っぽい雰囲気を加えています。

使ったのはピンクのバラ2種類、アスター、カーネーション、トルコキキョウ、千日紅、ブバルディアなど。ピンクや白のかわいらしい花をたくさん散りばめました。また、最後に胡蝶蘭をポイントにのせています。短く切って差すと、名前の通りどこかお花畑を飛ぶ“蝶”のように見えます。

ピンクでかわいらしくありながら、かわいいだけじゃない、まさにマリー・アントワネットのような花束です。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

がん闘病中の母から、子育てをがんばる娘へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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