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手仕事の喜びと、楽しみ。『アラン、ロンドン、フェアアイル 編みもの修学旅行』

手仕事の喜びと、楽しみ。『アラン、ロンドン、フェアアイル 編みもの修学旅行』

撮影/猪俣博史

最近、毛糸メーカーや毛糸を扱うお店の方とお会いする機会が多いのだが、そのだれもが異口同音に嘆いているのが、「若い人たちの編みもの離れ」だ。ファストファッションが普及し、お金をかけなくても簡単におしゃれができる今、わざわざ時間や手間をかけて手作りすることに意味を見いだせないというのも、確かにわからなくはない。

そんななか、若い層を中心に絶大な人気を誇る編みもの作家が登場している。三國万里子さんだ。今のファッションにすんなりなじむ彼女の作品は、遊び心があっておちゃめなのだが、どこか懐かしさも感じる。それは、独自のモチーフやデザインがプラスされながらも、根底にアラン、ガンジー、フェアアイルなど、伝統的な編みものの手法がしっかりあるからなのだろう。

その三國万里子さんの著作『アラン、ロンドン、フェアアイル 編みもの修学旅行』は、編みもののハウツー本ではなく、彼女がニットの伝統が息づく土地を訪ねた旅行記だ。

それぞれの土地には、その風土だからこそ生み出された独特の毛糸や柄、デザインがある。一枚のセーターから、土地の歴史だけでなく、その編み手の暮らしぶりなどにも思いをはせる三國さんの語り口は、作り手ならではの目のつけどころがおもしろく、実に魅力的だ。そのセーターの模様に込めた編み手の思いを想像したり、ちょっとしたディテールに気づいて感激してみたり。作った人への深い思いや敬意が伝わってくるのだ。

それにしても、この本に登場する古いセーターやストールの見事なこと! 料理や裁縫と同じように、おそらく親から子へとその技術が伝えられてきた編みものだが、生活必需品的なものばかりではなく、なかには工芸品と呼ぶべき、精緻(せいち)で美しいデザインのものもある。一本の糸から、さまざまな編み方を組み合わせることで自在にデザインできる編みものが、実にクリエーティブなものであることがあらためてよくわかる。

自分の手と編み針さえあれば、さまざまなものが生み出せる編みものの喜び、奥深さ、手仕事の楽しさ。若い世代にも、もっと伝わって欲しいと思わずにいられない。

(文・武富葉子)


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    湘南 蔦屋書店 料理・暮らしコンシェルジュ。
    料理を中心に、暮らしの本や雑誌の編集に二十数年携わったのち、思うところあって売る側へ。現在は料理だけでなく、手芸の楽しさを広めるべく、書店の枠を超えて活動中。通勤電車での編み物が小さな楽しみ。

    一度も食べたことがない料理を、味わう。『紅茶と薔薇の日々』

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