花のない花屋

スリランカで結婚する夫の娘へ。「とても愛しています」

  

〈依頼人プロフィール〉
佐山亜紀さん(仮名) 42歳 女性
東京在住
会社員

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夫の娘(24)が1月に結婚します。相手はスリランカの方で、あちらで盛大な結婚式を挙げ、そのまま現地で暮らす予定です。

出会った頃、彼女はすでに大学生だったので、どう接するのがいいのか考えながらのスタートでした。私には前夫との子どもが2人いて、夫には前の奥様とのお子さんが3人います。私も彼も、お互い仕事と子育てで忙しく、近所だったこともあって別居のままのお付き合いでした。

彼女も大学が忙しく、顔を合わせることはなかなかありませんでしたが、合うときはいつも笑顔で、私の不安を吹き飛ばしてくれました。

3人兄姉の長女で、幼い頃に母親を亡くしたため、心を強くして生きてきたのだと思います。私も夫も、娘の辛そうな顔や悲しそうな顔を見たことがありません。でも、私が現れたことで父親との時間が減り、寂しい思いや複雑な思いを抱かせてしまったと思います。どこかに自分の気持ちを吐き出せる場所があるかな、とずっと心配していました。

最近やっと私の仕事も子育ても落ちついてきたので、これからようやく娘とゆっくり向き合えるかなと思っていた矢先、結婚の報告を受けました。もっと一緒に過ごせばよかったという後悔と、離れてしまう寂しさが本音ではありますが、それは内緒にしておきます。「あなたが心を預けられる人と出会い、本当に本当に本当にうれしい。血はつながっていないけれど、とても愛しています」。こんな気持ちを込めて花束を作ってもらえないでしょうか。

彼女はトリンドル怜奈さんに似ていて、色白で目が大きく美人ですが、化粧っけがなくサバサバしています。頭の回転が速く、思いやりがあり、誰とでも仲良くなれる性格です。アジアや南国、沖縄などの自然が好きで、よく旅をしていました。ナチュラルな雰囲気のお花が似合うような気がします。どうぞよろしくお願いします。

  

花束を作った東信さんのコメント

娘さんは南国や自然が大好きだとのことでしたので、南国の花を使い、ナチュラルな雰囲気の花束を作りました。

ぱっと目につくのは、オレンジ色のヘリコニア。葉がギザギザした長い植物はレジェリアというオーストラリア原産のネイティブフラワーです。赤い火花を散らしたような花は、このレジェリアの花です。その他、プロテア、バーゼリア、アルビフローラ、ネオレゲリア、ジンジャー、バンクシアの実などを挿しました。南国の植物は個性的でパワフルですね。まわりをぐるりと囲んだユーカリは、丸いポポラスとグニユーカリの2種類です。

「血はつながっていないけれど、とても愛しています」という言葉が心に残りました。遠く離れてしまっても、すてきな親子関係が続きますように。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」まとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

スリランカで結婚する夫の娘へ。「とても愛しています」

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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