このパンがすごい!

まるでビストロ 妥協知らずのサンドイッチ/イトキト

スモークサーモンとかぶのソテーのサンド


スモークサーモンとかぶのソテーのサンド

自家製ローストポークとりんごのソテーノルマンディ風


自家製ローストポークとりんごのソテーノルマンディ風

アプリコットとクリームチーズのバゲットサンドを開いたところ


アプリコットとクリームチーズのバゲットサンドを開いたところ

紙できれいに包装され、サンドイッチが並ぶ


紙できれいに包装され、サンドイッチが並ぶ

勝野真一シェフと奥様


勝野真一シェフと奥様

外観


外観

イトキト(東京)

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デニッシュ類も充実

 勝野真一シェフの作るオリジナリティー豊かなサンドイッチ。プライスカードには、フレンチレストランのメニュー表でも見ているような名前が並んで、わくわくを禁じえない。その数は、十種近くに及び、前菜、メイン、デザートまで選ぶことができた。

 前菜には、スモークサーモンとかぶのソテーのサンドを。スモークサーモンの香り、塩気、旨味(うまみ)が、素直な味わいのカブに移って醸し出される妙味。バターの風味にくるまれ、かぶからは汁気とともに甘さが漂いだす。身はざっくり、葉はぱりっと。それぞれの食感を活かして丁寧にソテー。サーモンがたっぷり盛られるのもうれしい。サーモンとかぶははじめて出会う組み合わせだが、意外にもブリ大根みたいな親しみやすさを感じた。

 「この組み合わせを思いついたとき、やったーと思いましたね(笑)。時間が経ってもおいしく食べられるように、バターソテーでしっかりと焼き目をつける。それでいて火が通りすぎないように。ソースはにんにくとサワークリームを合わせてシーザーっぽい感じに」

 メインは、自家製ローストポークとりんごのソテーノルマンディー風。ローストポークから発する豚のフレーバーを、りんごのやさしさによって、甘さの方向へ導く。りんごから放たれる甘さは予想を超えて豊かである。

 「りんごは、白ワインと生クリームを煮詰めたもので煮ています。ソースも白ワインを大量に煮詰めて、生クリームやエシャロットやカルヴァドスを合わせています」

 デザートには、アプリコットとクリームチーズのバゲットサンドを。アプリコットジャムを予期しながら噛みつくと、丸ごと1個のあんずが並んでいるサプライズ。くにゅっとした感触とともにあんずの果汁がほとばしり、クリームチーズと鉄板の相性を見せる。そこに黒こしょうやローズマリーやフェンネルなどスパイスの花が開き、華やかさを加える。このあんずにも白ワインとブランデーで煮て、アールグレイをからめるという丁寧な仕事が加えられている。

 おいしいうちに提供できるよう、サンドイッチは毎朝仕込む。鍋をふってソテーし、ひとつひとつに対してそれに合ったソースを作り、バランスや彩りを考えてパンに組み込み、紙でラッピングする。たいへんな手間だが、妥協はしない。

 「なんでこんな面倒くさいことやってるんだろう(笑)」という勝野シェフの言葉とは裏腹に、思いは実に熱い。サンドイッチに魅せられ、サンドで名をなした有名ベーカリーでの研修に加え、フレンチレストランでも働いた。自分の店を持ったとき、それが他の店にない「武器」になると思ったからだ。「最後のひと工程、ソースの味つけにどこまでこだわるかが大事なところ」

 サンドイッチだけではない。和牛の牛すじのトマト煮こみのフォカッチャは、洋食屋さんのビーフシチューさながらの味わいだった。牛すじが舌の上でとろとろほどけ、ビーフの旨味がしたたっていく。よほどの長時間煮なければ、こんな味にはならないはずだ。

 「捨て窯(がま)で作ります。鍋に、牛すじとたまねぎ、トマトを入れて、オーブンに入れ、余熱で煮込む。フランスのパン屋さんがやってることがヒントになりました」

 捨て窯とは、火を落とし温度が下がっていく窯のこと。むかしヨーロッパでは、晩ご飯のおかずを入れた鍋を人々がパン屋に持ち寄り、パンを焼き終えたあとの窯に入れ、調理をしていた。そんな余熱の可能性に着目したのだ。オーブンを覗(のぞ)くと、見たこともないほど大きなストウブ(フランス製の鋳物ホーロー鍋)が鎮座している。その眺めは、パン屋でありながら、ビストロさながらの仕事を行う、イトキトのありかたが象徴されているようだった。

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イトキト
東京都大田区北千束1-54-10 佐野ビル1F
03・3725・7115
10:00~20:00/土曜・祝日10:00~19:00(日曜・月曜休み)

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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