このパンがすごい!

極上のイタリア食材を選んではさんで/オルトレヴィーノ

ポルケッタのパニーノ。パンを脇にずらして中身を見せたところ


ポルケッタのパニーノ。パンを脇にずらして中身を見せたところ

ポルケッタ。仔豚をオーブンでローストしたもの


ポルケッタ。仔豚をオーブンでローストしたもの


パニーノ タレッジョ+生ハム+ハーブサラダの中身


パニーノ タレッジョ+生ハム+ハーブサラダの中身


自家製スキャッチャータ


自家製スキャッチャータ


ガラスケースの中に置かれた食材からメニューを選ぶ。店内でも、テイクアウトでも可


ガラスケースの中に置かれた食材からメニューを選ぶ。店内でも、テイクアウトでも可


古澤一記シェフ


古澤一記シェフ

オルトレヴィーノ(神奈川)

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食材もワインも充実

 オルトレヴィーノで客を待ち受ける、入ってすぐ左側のガラスケース。チーズ、生ハム、生パスタ、サラダや煮込みといったお総菜に、ポルケッタ(ローストポーク)。選び抜かれた極上のイタリア食材と料理が、すべてガラスケースの中にあり、客はそこから食べたいものを指さすという垂涎(すいぜん)のシステムなのだ。

 私にとって最大の興味は、パニーノ(サンドイッチ)。メニューを見るとどれもうまそうで迷うことこの上ないが、「スペシャルパニーニ!!」と興奮気味に大書きされたポルケッタに懸けてみる。

 店の奥のカウンターでサンドイッチを組み立てるのが見える。こんがり焼けた豚肉の塊がどーんと持ち込まれ、分厚くカット。そしてこれも濃厚ないい色に焼けたスキャッチャータにはさまれる。あれをいま食らうのだと思うと、胸の鼓動が抑えきれない。

 ファーストコンタクトから濃密なオーラの中にとらえられた。ばりばりばり! 硬いと思われた皮はあっけなく割れ、顎(あご)の骨をふるわせる激しい振動が快楽とともに伝わってくる。身はもちっとした感触で舌を撫でる。めったに味わうことのない濃密な小麦の甘さ。ナポリ産のイタリア小麦ならではの感動的な風味。

 ぶりっとした豚肉に歯が着地。わさわさと崩れ、脂がとろけ、野生味に満ちた芳香が放縦に飛びまわる。その内側から、ローズマリーやフェンネルシードといった豚肉に仕込んだハーブが花開く。舌を這い流れる甘きソースと肉汁。それを飲み込むたび、残り香が喉から鼻孔へと漂う。どこかフルーティで、まろやか。その豊かな味わいを、濃厚なるイタリア小麦ががっしり受け止める。

 後口に、北イタリアの白ワインを流し込んだとき、ケミストリーは起きた。ぶどうの甘みも苦みも芳香もアルコールのきゅんとくる感じも、ただサンドイッチと一体の快楽のために奉仕する。一瞬でありながら、まるで長い長い夢を見たかのような、濃密な時間だった。

 イタリア的豪快さと繊細さが同居したようなポルケッタ。古澤一記シェフの説明を聞く。

 「皮付きの豚の塊をオーブンで焼いています。気をつけているのは、皮をしっかり焼きながら、中をジューシーにすること。肉汁をソースにします。(肉を置いている)鉄板に白ワインをいっぱい入れておくんです。お肉の鉄板から豚の脂や肉汁がいっぱい流れてきて、渾然(こんぜん)一体となる」

 もう一種類、タレッジョ(北イタリアのウォッシュチーズ)+生ハム+ハーブサラダのパニーノを紹介したい。それら三つ巴のせめぎあいにある高度なバランス。とろとろのチーズから素直で純粋なミルキーさがあふれる。かと思えば後味にびりびりと白カビの味わいが漏れ、おもしろい。チーズのとろけは、生ハムから滲(にじ)みだす旨味(うまみ)に満ちた脂とあいまって極上の愉楽となる。その芳醇さゆえに、分厚く盛られた野菜が拮抗する。野菜はまるで野草のような力強さがある。甘みに加え、苦み、辛み。そこに、スキャッチャータの小麦の甘さ、ミネラリーな風味が加わり、素材同士が共振する。

 「パルマの生ハムは、空調を使わず自然な風で2年間熟成させたものです。野菜は、毎日市場に寄って鎌倉野菜を仕入れます。ルッコラ、わさび菜、マスタードリーフ、クレソン……。ぴりっとする感じがあるものを5種類ぐらい混ぜています」

 古澤シェフは、イタリアに約10年滞在。料理人、ソムリエとして経験を積み、ワイナリーでも働いた。「イタリアの食文化の根幹は、料理=パン=ワインのアッビナメント(マリアージュ)」。イタリアにはどの村にもガストロノミア(総菜屋)があり、お総菜や生ハムやチーズを売っていて、イタリア人は日常の中でごく自然にアッビナメントを楽しむ。そんな状況を日本でも実現すべく開店したのが、総菜屋+ワインショップを最高のクオリティで実現するオルトレヴィーノ=「エノガストロノミア」なのだ。

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オルトレヴィーノ
神奈川県鎌倉市長谷2-5-40
0467-33-4872
10:00~19:00/イートインのラストオーダー18:30(水曜休み)

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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