花のない花屋

お互いがんサバイバー これから試練に向かうママ友へ

  

〈依頼人プロフィール〉
小沼香代さん(仮名) 50歳 女性
愛知県在住
翻訳・通訳業

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その友人とは、10年ほど前に息子の学童野球がきっかけで知り合いました。彼女は、双子の男の子と三男を育てるお母さん。それと同時に自分のオフィスを構え、バリバリ働く経営者でもあります。明るくさっぱりとした性格で、みんなから「姐(ねえ)さん」と親しみを込めて呼ばれています。

息子たちは中学に進むと軟式野球チームに入部し、彼女とはチームメートの母として苦楽をともにしました。「谷間の世代」と言われながら、最終的に全国3位という成績が残せたのも、親分肌の「姐さん」がいたからです。

いま息子たちは他県へ野球留学をしていますが、同級生の息子を持つ母親として、また同世代の友、自営業を営むワーキングマザーとして、大切な友達付き合いが続いています。

昨年、私に肺がんが発覚したときも彼女は親身になって相談に乗り、明るい笑顔で元気づけてくれました。早期ではありませんでしたが、すぐに手術をし、治療と体質改善に取り組んでことなきを得ました。

しかし、その半年後……。今度は彼女に乳がんが発覚しました。「3人も子どもを産んだから、乳房ももういらないわ」なんて明るく打ち明けてくれましたが、きっと心の中はいろいろな思いが渦巻いていたはずです。

その後の検査で幸いにも早期であることがわかり、完治が見込める状態だそうです。とはいえ、これから手術や治療でつらいこともあるでしょう。ただでさえ忙殺される日々に治療も加わり、ますます自分の時間が取れないかもしれません。

そんな試練に立ち向かっている友人に、励ましと癒やしになるような一束のお花を贈りたいです。花には人の心を癒やし、今を生きる幸せを感じさせる力があると思います。こんなときこそ、花を見て自分の身体や心と向き合ってもらえたら……。

今年、息子たちは高校3年生。甲子園を目指す最後の夏に挑みます。野球少年を持つ親にとって、息子たちを応援することは生きがいです。子どものことを考えると、病気のことなど忘れてしまいます。白球、芝、入道雲、にぎやかなスタンドの応援……。ぜひ、息子たちの夢見る甲子園を思わせるような花束をつくっていただけないでしょうか。ステキな花束が少しでも彼女の励みになりますように……。

  

花束を作った東信さんのコメント

野球少年たちのパッションを花にしたアレンジです。甲子園の夏の太陽をイメージして、全体をイエローでまとめました。

使用した花材は、ヒマワリ、鮮やかなレモンイエローのダリア、ルピナス、カーネーション、八重咲きのチューリップなどです。外へエネルギーが広がっていくようなイメージで、まわりには小花のオブリザタムをたくさんちらしました。

どこかにグラウンドの土っぽさを入れたかったので、茶色の入ったパフィオペディラムも加えています。リーフワークは、甲子園を連想させるアイビーです。

イエローは元気をくれる色。花を見て、どうか少しでも前向きになってもらえますように。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
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花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

お互いがんサバイバー これから試練に向かうママ友へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


ようやく授かった息子に、私のもとにきてくれてありがとう

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進行性の難病とともに生きる私に

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