ほんやのほん

なにげない日常をいつくしむ。『だいじょうぶ だいじょうぶ』ほか

  

撮影/猪俣博史

2016年に「恋ダンス」で世間を席巻した星野源さんのエッセー『そして生活は続く』の一節に激しく共感しています。いわく「なにげない日常」の中には「なにげない日常しかない」と。

日常のすばらしさや恵まれていることのありがたさというのは、「見つめ直し、向き合って、物事を拡大し新しい解釈を加えて」やっと見いだすことができると、星野さんはいいます。今日は、そんな「なにげない日常」にひそむ確かな幸せを実感するための2冊の絵本を紹介します。

あらゆるものとの出会いこそが喜び『だいじょうぶ だいじょうぶ』

1冊目は、いとうひろしさんの『だいじょうぶ だいじょうぶ』。おじいちゃんとお散歩に行くと、ぼくはいつでも遠くの海や山を冒険したような気持ちになります。草や木、虫や動物も、人も車も、あらゆるものとの出会いこそが喜びに満ちあふれたものであるとおじいちゃんは教えてくれるから。でも、世界が広くなればなるほど、困ったことや怖いことにも遭遇するようになって……。

そんなとき、おじいちゃんはぼくにとびきりの魔法をかけてくれるのです。やがて大きくなったとき、今度はぼくがおじいちゃんに魔法をかけてあげる番。世界の美しさとともに、おじいちゃんとぼくの柔らかで温かな心のつながりを感じられる絵本です。

世界はきっと美しい『みんなが おしえてくれました』

2冊目は、五味太郎さんの『みんなが おしえてくれました』。わたしは、とても恵まれた女の子です。いろんな動物たちがいろんなことをわたしに教えてくれるのですから。

歩き方はねこが、かっこいい走り方は馬が、木の登り方はさるが教えてくれました。花の香りや味のことはちょうちょが教えてくれたし、夜のことはふくろうだって教えてくれます。他にももっと細かなことは、周りにいるたくさんの人が教えてくれるのです。周囲の人や動物の愛情を一身に受けて、わたしが自信満々に発する最後のページの一言が本当にすてき。五味太郎さんの言葉の選び方も、さすがです。

大人も一生懸命生きているけれど、子どもを取り巻く環境だって、とても複雑でむずかしい今の世の中。それでも、私は伝えたいと思います。世界はきっと美しいんだよってこと。その美しさは、実は足元にだって落っこちてるんだよってこと。それを見つける豊かな力を養いなさいってこと。そして、大人の皆さんはどうか、どうか子どもが豊かな力を育むためのお手伝いをしてあげてくださいってこと。

(文・長谷川彩)

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蔦屋書店 コンシェルジュ

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長谷川彩(はせがわ・さい)

湘南 蔦屋書店 児童書コンシェルジュ。
新卒で入った会社をたった1年で退職した後、北海道富良野でラベンダーに囲まれ半年を過ごす。滞在中「私には本しかない」と悟り、帰郷。現在は、選書集団BACHにも所属し、武者修行中。いつか直接お礼を言いたい命の恩人(=それはもう影響を受けた人)に松浦弥太郎、又吉直樹、西加奈子がいる。

何かを一心に信じることのつよさ。『沈黙』『ジャッカ・ドフニ』

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