このパンがすごい!

「でか盛り」の誘惑が、食欲中枢を直撃/ツオップ

りんごとローストポークのサンド


りんごとローストポークのサンド

焼豚とにんじんのサンド


焼豚とにんじんのサンド

イチジクとチョコのミルフィーユ


イチジクとチョコのミルフィーユ

フリュイ


フリュイ

店内風景


店内風景

外観


外観

ツオップ(千葉)

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多種多彩、圧巻の品ぞろえ

 豪快さが誘惑する。欲望のおもむくままフルーツをのせ、具材はパンにはさめるだけはさんだかのような盛りっぷり。「自分がおいしいと思うものしか作れない」と、伊原靖友店長が語るごとく、気前のいいでか盛りが店内に並び、食欲中枢を刺激せずにおかない。
 「りんごとローストポークのサンド」はまさにそんなパンのひとつだ。肉々しい自家製ローストポークの爆発力で大量のぱりぱりレタスを食らう快楽。いっしょに合わせられたのはりんごのワイン煮。フルーティーさとワインの芳香が豚肉の甘さを呼び起こし、この上ない組み合わせにしている。

 肉の旨味(うまみ)の勢いにのって野菜をがつがつほお張るとき、激しい快楽が駆け抜ける。その定説を応用、ツオップはかくも食べた人ことごとくを虜(とりこ)にする。

 「焼豚とにんじんのサンド」もその一例。ふわふわ食パンのおふとんに豚さんが寝ている。ただのキャロットラペサンドだと思う早合点をいさめるかのごとく、ぷーんとごま油のいい香り。しょうがとともにごま油でソテーされたにんじんはナムル風の香りを発し、食欲を増進させてくれることこの上ない。焼豚の甘辛パワーで、しゃきしゃきぽりぽりとにんじん千切りの分厚い層とぱりぱりなレタスを食べ進めていく。

 「冷蔵庫にあったものをパンにはさんでまかないにしてたのが、いまや定番のサンドイッチになって」と伊原店長は笑うが、押しも押されもせぬ人気パン。いまや隆盛を誇る「野菜萌え断面サンド」の元祖的存在ではないか。

 上記2つのサンドとも角食パンを使用。ぷわんと跳ねる弾力がありながら、食パンのしっとりさに具材が「包まれてる感」もある秀逸さ。

 「よく練って、よく発酵をとるのはもちろん、型に詰める前に2回伸ばす工程を入れて弾力をだし、サンドにしてもぺたーっと潰れないようにしています」と伊原店長。

 「ミルフィーユ」も欲望に正直なパンである。ライ麦パンの生地を伸ばし、具材をのせ、いっしょに食べたらおいしかろう具材をのせ、さらに伸ばした生地をのせ……を繰り返す。層状に積み上げられた具材と具材が口の中で混じりあって口内で調理される。「カボチャと栗のミルフィーユ」は、名前の通りのほっこりコンビ。あるいは「いちじくとチョコのミルフィーユ」における、具材の完全なる相性。いちじくのただれた甘さはチョコのカカオ感と酸味へ飛び移り、またいつの間にかいちじくの果汁が顔を出すという調子に揺れ動く。チョコのほろ苦さとライ麦のフレーバーも驚くほど溶け合う。

 ミルフィーユに使われる生地、ヨーグルトライは、ライ麦のイメージを完全に覆すほどさくさく食べられる。日本人が苦手な、ライ麦パン特有のサワー種の酸味をまったく感じさせない。でありつつ、ヨーグルトを入れて乳酸菌の甘さを強調するなど、4つも種を入れてまろやかな味わいを作りだしている。理論の裏付けが生み出した独創的なアイデアだ。

 でか盛りはサンドイッチや調理パンに限ったことではなく、ペストリーにおいてもまた然(しか)り。デニッシュ生地にこぼれ落ちそうなほど、6種類のベリー(イチゴ、ラズベリー、グロゼイユ、ブルーベリーなど)を高く持った「フリュイ」。ぷちっと噛(か)むと同時多発的に弾け飛ぶ甘酸っぱい果汁が、甘くて濃厚なカスタードの上にふりかかる。とともに、ばりばりと噛んで砕けたデニッシュ生地の激しい香ばしさと混じりあう。濃厚さと濃厚さのぶつかり合いが狂わせてくれるのだ。

 「パン屋らしいしっかりした食感のデニッシュを作りたくて、フランスパンと同じ粉を使って、一層の厚さも少し厚めにしています」

 すごいパンは枚挙に暇がない。行列の絶えない、このキング・オブ・ベーカリーには、約300ものパンが毎日並んでいるのだから。狭い店内の上から下まで並べられたパンに360度包囲される体験に大興奮、ついトレーに乗り切れないほどパンをのせてしまう。

パン焼き小屋 ツオップ(Zopf)
松戸市小金原2-14-3
047・343・3003
6:30~18:00

    ◇

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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