花のない花屋

言葉のかわりに花束を、多感な時期の娘を育ててくれた姉に

  

〈依頼人プロフィール〉
西 聡子さん 46歳 女性
山口県在住
大学職員

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私は、娘が4歳のときに離婚しました。その後一人で育ててきましたが、周りの人に助けられたおかげで、娘は健康で素直で、ひたむきな子に育ってくれました。

とはいえ、誰にでも反抗期はあるものです。娘が中学3年生くらいのとき、彼女の交友関係を批判したことがきっかけで大げんか。そのとき、手をさしのべてくれたのが三つ上の私の姉でした。

私が出産のときも立ち会ってくれた姉は、離婚で家庭内がもめていたときにも、娘をしばらく預かってくれていたことがあります。このときも、姉が「しばらくうちに居候したら?」と声をかけてくれ、ほんの少しのつもりが、一年半もお世話になってしまいました。その間、姉は自分の子どものように心から娘をかわいがってくれ、毎日愛情いっぱいの手作りお弁当を持たせてくれました。

冷却期間もあってか、娘はすっかり大人になり、高校二年が終わった頃に家に戻ってきました。姉は、彼女にとって叔母さんとはいえ、母ではありません。多少遠慮もあったのか、久しぶりに戻ってきたときは気遣いのできる優しい子になっていました。しかも、パン講師の姉に伝授されてお菓子作りまで上手になっていました。

そんな娘が3月1日、高校を卒業しました。この日を元気に迎えられたのは、第二の母である姉のおかげです。でも、毎日のように顔を合わせているので、これまで照れくさくてちゃんとお礼の言葉も言っていなかった気がします。

娘の卒業を節目に、今までの感謝とこれからもよろしくの気持ちを込めて、姉にお花を贈りたいです。姉はフラワーアレンジメントが趣味で、家には常に生花が飾られています。50歳ですが、小柄で童顔、ファッションも若々しく、たまに私の方が姉に見られます。華やかなだけでなく、芯の強さもある姉に似合う花束をお願いします。

  

花束を作った東信さんのコメント

“華やかなだけでなく、芯が強い”という言葉から、今回はショッキングピンクを選びました。この色は華やかでありつつ、どこか強さを感じるピンクです。使用した花材は、ダリア、チューリップ、ラナンキュラス、ガーベラ、カーネーション、バラ。トップにはアクセントとしてカトレアを挿しました。

リーフワークはドラセナを“ビロード折り”したものとアセボを組み合わせたもの。淡いグリーンを入れると全体がやわらかい印象になりますが、今回は、あえて濃い色のグリーンを選びました。娘さんの卒業という節目に感謝の気持ちを贈りたいということでしたので、パリッとした、端正な印象の花束に仕上げるよう心がけました。これからもステキな姉妹関係が続きますように。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

言葉のかわりに花束を、多感な時期の娘を育ててくれた姉に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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