花のない花屋

大人になってから友達になった彼女へ

  

〈依頼人プロフィール〉
伊藤くるみさん(仮名) 42歳 女性
大阪府在住
団体職員

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大人になって友達を作るのはやさしいことではありません。まして、職場の同僚となるとなおさらです。当時、彼女は代表秘書をしており、私とは別の部署。美しい彼女は、厳しいけれど華やかな部署にぴったりでした。

私と彼女は業務でほんの少し接点があっただけでしたが、ウマがあったのかすぐに意気投合。美人なのに、話をしてみると“ザ・大阪人”。明るくひょうきんで、いつも笑いを取ろうとします。今となっては、どうして2人だけでカラオケに行ってミスチルの曲だけで2時間ノンストップで歌い合ったのか、終業後2人で吉本新喜劇を観に行ったのか、きっかけが思い出せません。

数えるほどしか一緒に遊びに行っていませんが、それからはしょっちゅうLINEでやりとりをしたり、旅先からハガキを送りあったり、ちょっとしたプレゼントをしあったりするようになりました。一度は、突然レトルトカレーが送られてきたことがあります。パッケージが面白くて、「こんなん見つけたよ」というつもりだったのかもしれませんが、ちょうどインフルエンザにかかっていたときだったので、ありがたかったのを覚えています。

2、3年前に配偶者の転勤に伴って東京に転居したのですが、彼女はきっと毎日がてんてこ舞いだったと思います。乳飲み子を抱えての引っ越しに加え、子育てには実家の助けも難しく、新天地で新しい仕事に取り組まなくてはいけませんでした。でも、彼女はしんどいときほど、元気に振る舞うタイプです。LINEでやりとりをしていても絶対に弱音は吐きませんし、愚痴も言いませんでした。

ただ最近、言葉のはしばしに「しんどいんだろうな」と感じることが重なりました。そんな彼女に、少しでも元気になれるような華やかなお花を作っていただけないでしょうか。いい日も悪い日もまあまあの日も、毎日花以上に咲き、笑ってもらえたらうれしいな、という気持ちを込めて。

  

花束を作った東信さんのコメント

“ザ・大阪人”というイメージのお友達への花束なので、元気いっぱい華やかなアレンジにしました。今回は、特別なお祝いというよりは「頑張って」というエールを込めたものなので、明るい花をふんだんに使いました。

使用した花材は、バラ、ダリア、スイートピー、スカビオサ、ガーベラ、バルビネラ、エピデンドラム、ラナンキュラス、ネリネなどです。イエローとピンクを組み合わせた、甘くてかわいらしい雰囲気の花束になりました。

たっぷりと挿した花を生かしたかったので、リーフワークは入れず、ダリアの葉をところどころにアクセントとして加えています。

大阪の伊藤さんから東京のお友達へ、熱いエールが届きますように。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」まとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

大人になってから友達になった彼女へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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http://azumamakoto.com/

PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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