このパンがすごい!

湘南の海の幸、山の幸をたっぷりと/W Sandwich Factory

W Sandwich Factory(神奈川)

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パクチーたっぷりバインミー

 リゾートのパン屋。カフェなどが立ち並び、ときおり輝く海がのぞく葉山海岸通り。その沿道、森戸神社の赤い鳥居の向かい側にW Sandwich Factoryはある。以前、ワカナパンという名で知られた人気店がリニューアル、注文を受けてから作る本格派のサンドイッチに乗り出した。

 サンド用のパンとして使用されるのは、ダッチクランチ。表面に描かれたひび割れを指してタイガーブレッドとも呼ばれるオランダ式のパン。かりかりと軽快な割れっぷりが心地よい。さっくりちぎれて食べやすく、ほんのりとした甘さが具材とのなじみをよくする。

 こんなシチュエーションだから、海の幸のサンドを試したい。グリルドアヒはカジキマグロのロースト。衣のようにまぶされたゴマが実に香ばしい。コクと甘さのある自家製マヨネーズがフィレオフィッシュ的な相性を見せ、その勢いで食べ進むたっぷりの野菜も新鮮でぱりぱりとした食感も小気味よい。

 海の幸、山の幸が豊富にある場所。地の食材を使ったパンをそろえる。「大根やカブのような根菜は三浦、葉山のものを。漁師さんに知り合いがいて、ひじきやわかめやなまこなどを買っています。たこはラグーにしてフォカッチャにしたり。しらすも、葉山のはすごく大きいんです」と竹内和宏店長。

 春は、しらすとひじきのフォカッチャ。しらすの新鮮さは、鼻孔を吹き抜ける風味の快さで明らかだった。もう一種漂ってくる磯の香りがある。生地に混ぜ込まれたひじき。まるで磯にいて波しぶきとともに香ってくる海の香のさわやかさのようだった。パンにはかりかりとかぱりぱりとか角ばった食感はない。もちのようにふにゃりとなって、じゅーんと溶け、白い小麦の甘さで口をいっぱいにする。

 パンは、改名後もワカナパンのラインナップを継承。その特徴はもっちり感にある。代表的なのはバゲット。長野県産など国産小麦をブレンドした「信濃大地」を使用。地粉の素朴な風味があたたかさにつながっている。

 「私の考えるクロックムッシュ」は、食パンでなくバゲットで作る。二度焼きが食感を軽やかに変え、チーズも底もぱりぱりっと割れる。一方、中身はむちーっと、もっちりと軽やかさを両立させて沈む。おなじみのハムチーズ味に、ベシャメルソースに入れたナツメグが甘さを喚起する。

 レモンから起こした発酵種を使った、クロワッサン生地が秀逸。たとえば、パン・オ・ショコラ。ふくらみは軽やかに、薄い皮はさわさわと割れ、ぱふっとエアリーに沈む。豊かなバターの風味とともにかすかに香る柑橘(かんきつ)の香りが、その甘さを明るいものにする。フランス製のチョコレートはカカオのアロマも重厚、華やかな酸味でバターと恍惚(こうこつ)の相性を繰り広げる。

 店内から見える赤い鳥居をくぐって、森戸神社に行ってみよう。源頼朝ゆかりの由緒ある社(やしろ)。通り抜けるとそこは聖なる海。海岸で潮風に吹かれて食べるパンは格別だ。

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■W Sandwich Factory
神奈川県三浦郡葉山町堀内1039
046-876-1828
9:00~18:00(水曜休み)

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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