冷水料理相談室

上京して18年。お酒好きの母に初めて振る舞う手料理

  
 人気料理家の冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが、読者の皆さんの「料理のお悩み」を解決する新連載「冷水料理相談室」が始まりました。なんでもない毎日のごはんのヒント、特別な日の特別なひと皿、この人と食べるごちそう、あるいは遠くのあの人が喜ぶお料理は……? 冷水さんが、寄せられるご相談に答える形で、いろいろなお料理を作って下さいます。第1回は、「上京して18年。関西から遊びに来る母に、初めての手料理を作りたい」という、田中さんからのご相談です。

〈相談者プロフィール〉
田中麻美さん 36歳 女性
東京都在住
会社員
    ◇
 大学進学のため関西から上京して18年。ずっとひとり暮らしをしています。高校を卒業までは毎日母が食事を作ってくれていたので、自分で料理をすることはおろか、手伝いのために台所に立つことすらありませんでした。

 東京の物価の高さもあり、上京後はレシピ本を見ながら少しずつ料理を勉強しました。まだまだ上手とはいえませんが、今は料理が大好きで、たいていのものはおいしく作れるようになりました。

 でも、母にとっては30歳半ばを過ぎても娘は娘。まさかあの“食べる専門”の子が料理好きになっているなんて毛頭思っていないらしく、今でもときおり電話をかけてきては「ちゃんと食べてるの?」「どうせ外食ばっかりでしょ」と心配されています。最近は「料理のひとつもできなくてどうするの?」などと小言を言われ、大げんかに発展することもしばしばです(笑)。

 そんな母ももうすぐ70歳。いつの間にか白髪も増え、年々小さくしぼんでいくような姿が寂しく、胸が締め付けられる思いです。

 この夏、母が10年ぶりくらいに東京に遊びに来ます。母のことだから、手作りの惣菜などをいっぱいこしらえて持ってやってくると思いますが、この機会にぜひ手料理を振る舞いたいと思っています。あなたの娘も立派に料理ができる女性に成長しました。だからもう心配いらないよ。そう安心させてあげたいのです。

 子どものことばかりを考えて生きてきた母ですから、これからは子どものことは心配せず、自分の好きなことをやって楽しく過ごしてくれたらいいなと思っています。

 母は大のビール好きで、夕食はいつもおつまみのようなおかずをちょこちょことつまんでいました。ほっとなごむ家庭料理でありつつも、お酒に合いそうなおかずがあればぜひ教えていただきたいです。よろしくお願いします。

白身魚のフリット 甘酢ハーブサラダ

  
<冷水先生からのメッセージ>

 お母様に初めて作る手料理。これは力が入りますね。せっかくですから、ベーシックなおかずのなかに、お母様が「お!」と感心するような小技を効かせて、料理の腕が上達したことをそこはかとなく伝えられたらいいなと考えました。

 甘酢ソースをかけた白身魚のフリットは南蛮漬けのような佇まいですが、ディルやコリアンダーなどのハーブをたっぷりのせることで、香りも風味もぐっと洋風になります。フリットのふんわりした衣が甘酢ソースを吸ってくれるので、たれに漬け込まなくても味がしみ、衣のさっくりした食感を楽しめます。

 ポイントはあらかじめソースを作っておき、揚げたての熱々にかけること。仕上げにハーブをこんもり盛ると、フリットの熱が伝わってよりハーブの香りが引き立ちます。さっぱり味で、この季節のおつまみにはぴったり。ソースに和風だしを使っているので、ごはんにもよく合うと思います。母の日は少し過ぎてしまいましたが、ぜひお母様に作ってあげてください。

薄力粉はまんべんなく、薄くつけるのがさっくり揚げるコツ。つきすぎた分ははたいて落とす


薄力粉はまんべんなく、薄くつけるのがさっくり揚げるコツ。つきすぎた分ははたいて落とす


揚げ油の温度は160~170度(今回は米油を使用)。衣がきつね色になったらバットに上げる


揚げ油の温度は160~170度(今回は米油を使用)。衣がきつね色になったらバットに上げる

■白身魚のフリット 甘酢ハーブサラダ

◎材料(2人分)
白身の切り身…2切れ(*スズキやタイなど季節のもので)
塩…少々
新玉ねぎ…1/2個
ハーブやサラダ野菜…好みの量
揚げ油…適量

A
鰹昆布出汁…200ml
酢…50ml
薄口醤油…30ml
砂糖…30g
赤唐辛子…1本

B
溶き卵…大さじ2
水…大さじ1
薄力粉…大さじ1
片栗粉…小さじ1

◎作り方
1 Aを鍋に入れて火にかけ、砂糖が溶けるまで火を入れてから冷ます。
2 白身魚は皮をむいて(難しければむかなくても良い)ひと口大の大きさに切り、塩少々をふって10分ほどおく。新玉ねぎは薄くスライスする。
*普通の玉ねぎで作る場合はスライスしてから10分ほど水にさらし、水気をきっておく。
3 2の魚の水気を拭き、薄力粉(分量外)を薄くはたく。混ぜ合わせたBをつけて160~170度の油で揚げる。
4 皿に2の新玉ねぎを敷き、3のフリットをのせる。1の甘酢をかけて上にハーブサラダをのせる。
*今回はディル、コリアンダー、ミント、わさび菜を使用。

よく読まれている記事

 

バックナンバー
まとめて読みたい!「冷水料理相談室」 記事一覧

PROFILE

上京して18年。お酒好きの母に初めて振る舞う手料理

冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

PROFILE

  • 小林百合子

    編集者
    1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

  • 関めぐみ(写真)

    写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

トップへ戻る

小さな部屋で、夢を目指して働く私へ

RECOMMENDおすすめの記事