花のない花屋

不登校から志望校に合格、初志貫徹した娘へ

  

〈依頼人プロフィール〉
大西潤子さん 46歳 女性
東京都在住
会社員

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この春中学校を卒業した娘は、小学校6年生のときに起立性調節障害という自律神経系の病気になりました。健康そうに見えるのですが、朝はいつも低血圧からくる頭痛とたたかい、やっとの思いで登校する毎日でした。

そして中学2年のときには、担任の先生やバレーボール部のメンバーと合わず、症状が悪化。朝起きられなくなる日が増えてしまいました。9月になると、あの鎌倉市図書館のツイッター、「学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい」(2015年8月26日)をきっかけに考えることがあったようで、「私も学校へ行くなら死にたい」と不登校を選択。主治医の先生たちと相談し、紆余(うよ)曲折を経て、中学2年の11月に近所の中学校に転校しました。

すると、塾の友達と一緒だったこともあり、新しい環境にも慣れて奇跡的に症状が回復。朝もきちんと起きられるようになり、バレーボール部にも復活できました。遅れていた勉強も、3年の夏にはみんなに追いつくことができました。とはいえ、第一志望の地方の高等専門学校の合格ラインにはほど遠い成績で、受験はほとんど“賭け”のようなものでした。

娘はもともとはんだごてを使って電子ピアノやロボットが作ることが大好きで、ロボットコンテストに出るのが憧れ。中学1年の頃から、ロボコンに強い高専に見学に行っていました。思わぬことでつまずき、勉強に遅れをとってしまいましたが、誰になにを言われても意思を強く持って、ひたすら机に向かって勉強している姿が今でも目に焼き付いています。

そして、この春努力が実り、登校拒否から見事、第1志望校へ合格できました。病気に苦しみながらも、最後まであきらめずに初志貫徹した娘に、東さんのお花でお祝いをしたいです。

娘はかすみ草が好きなので、かすみ草を使って新たな未来に向かう花束を作っていただけないでしょうか。関ジャニ∞の丸山隆平くんも好きなので、彼のテーマカラーのオレンジや黄色っぽい色を加えていただいてもいいかもしれません。新たな旅立ちに添える花をお願いいたします。

  

花束を作った東信さんのコメント

第1志望校に合格したとのこと、おめでとうございます。いろいろと困難を乗り越えての合格、うれしさもひとしおだと思います。そんな新しい門出をお祝いする花束ですので、娘さんの好きなお花や色を使って、全体的に明るく元気が出るようなアレンジに仕上げました。

ご要望のあったカスミソウは、細かく切ってボリュームを出し、花束を縁取るようにぐるりとまわりに挿しました。全体には、イエローやオレンジの花を散りばめています。

使用した花材は、イエロー系はミモザ、ラナンキュラス、カーネーション、ピンポンマム、ルピナス、エピデンドラム、菜の花など。オレンジ系はカーネーション、ラナンキュラス、アルストロメリアなどです。トップには、ペペロミアという観葉植物を挿しました。まるで若葉が出たようなかわいらしい姿ですが、とても強い植物なので植え替えれば長く育てられるはずです。

今後もいろいろなことがあるでしょうが、どんどん前へ突き進んでいってくださいね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

不登校から志望校に合格、初志貫徹した娘へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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