花のない花屋

“ダウンボーイ”と3人の優しいお姉ちゃんたちに

  

〈依頼人プロフィール〉
田中玲子さん 44歳 女性
三重県在住
主婦

    ◇

我が家の子ども達は5人姉弟です。長女はこの春から中学生。次女は年子で小学6年生。三女は4年生で、4歳の四女は双子として生まれ、相方は“ダウンボーイ”です。

彼は心臓の部屋がきちんとわかれていない「心内膜床欠損症」として生まれてきました。ダウン症候群によく見られる先天性の疾患、「完全型の心房中隔欠損症」です。生まれてすぐ産院から転院し、6度の手術を経て今に至ります。私も一緒に入退院を繰り返す4年間で、お姉ちゃん達にはずっと寂しい思いをさせてしまいました。

さらに、同時期に夫の伯母が認知症になり、私は伯母の介護も抱えることになってしまいました。夫は不規則な時間の仕事をしているため、実家の母に来てもらったり、ママ友に助けてもらったりしましたが、4人の子ども達は両親のいない寂しい夜をたくさん過ごしたと思います。

そんな状況で、3人のお姉ちゃんたちは朝から晩まで走り回る母を見て、「大変だな」と察してくれたのか、自然と各々の得意分野で私を助けてくれました。長男のおむつ替え、着替えから、洗濯、ご飯炊き、家庭科で習ったばかりの味噌(みそ)汁やカレー作り……。

私はいつも怒ってばかりで、きちんと感謝の気持ちを伝えられずにいましたが、この機会に優しい人間に育ってくれた3人のお姉ちゃんたちに、すてきな花束を贈り、これまでの感謝とこれからもよろしく、という気持ちを伝えたいです。

長女が好きな色は薄い水色。次女はピンク、三女はオレンジや黄色です。それぞれ個性が強い子達ですが、不思議とバランスがよく、頼もしい三姉妹です。息子を中心に囲むような「和」や「輪」をイメージしてもらえるとうれしいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

3人のお姉ちゃんたちに……ということだったので、それぞれの好きな色を入れました。“長女が好きな水色”は、ブルーと白のアジサイ、“次女が好きなピンク”はエデピデンドラムやラナンキュラス、“三女が好きなオレンジや黄色”は、サンダーソニアやマリーゴールド、チューリップです。ところどころに、かわいらしい三つ葉のような観葉植物、ポリシャスも挿しています。

リーフワークは、ハランの葉を“くるくる巻き”にしたものをたくさん加えました。これは“家族の和”を表し、仕上げにのせたグリーンネックレスは“家族のつながり”を表しています。

全体的にカラフルでとても楽しそうな雰囲気の花束になりました。きっと、実際のご姉弟もそんな感じなのではないでしょうか。ご家族みなさんで楽しんでいただけたらうれしいです。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」まとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

“ダウンボーイ”と3人の優しいお姉ちゃんたちに

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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