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<65>注目の写真集が並ぶ陽だまりの店

<65>注目の写真集が並ぶ陽だまりの店

 JR荻窪駅のにぎやかな雰囲気から離れること約7分。昨年7月にオープンした「Photo book cafe boats」は、環八の西側に広がる古くからの閑静な住宅街の一角にある。全面ガラス張りの店内には自然光がきれいに回り、随所に配された観葉植物の緑が美しい。入り口の右側には一面の本棚があり、国内外の写真集約600冊が自由に手に取れるようになっている。

 「4~5年前から本格的に写真集を集めるようになり、今では700冊になりました。そのうち600冊をここに並べていますが、いずれは1000冊くらいにしたいです」

 オーナーの舟橋渉さん(37)は、会社勤めの傍ら、写真を趣味にしていた。自然と写真集にも興味が湧き、さまざまな写真集を手にしているうちに、写真を撮るだけでなく、見る方も好きになっていった。

 「写真集って安くないものが多いですし、書店でぱらぱら見ることはあっても、あまり買われないものだと思うんですよね。だからこそ、古いものも含めていろんな写真集をゆっくり、のんびりと見てもらえる場所があればいいなと思ったんです」

 舟橋さんがさまざまな写真集に興味を持つきっかけのひとつが、カルチャー雑誌「STUDIO VOICE」の人気特集「写真集の現在」だった。100冊以上もの写真集が紹介され、今注目すべき気鋭の写真家が網羅できるようになっていた。舟橋さんはこの特集を手がかりに、さまざまな写真集を探し歩くようになった。

 「普通の書店にないものが多く、よく東京都写真美術館の図書室に行きました。現物を見て、直感でいいなと思ったものを買い集めていきました」

 舟橋さんは、写真をどう解釈してもいいという自由なところに面白さを感じるという。
 「いろんな写真集を見ていると、中には『意味がわからない』と思うものはあります。でも、初めて見た時につまんないと思った写真集が、後になって面白く見えてくることがあるんです。写真を見る力って、いろんな写真集を見ているうちにだんだん備わってくるものなんじゃないかと感じています」

 飲食店とは無縁の世界からブックカフェのオーナーに転身して、もうすぐ1年になる。宣伝が不十分など、まだまだ課題は多いと感じているものの、今後は店内で写真展や、写真に関するイベントをやりたいと考えている舟橋さん。

 「写真好きな人って、絵画やアート好きな人に比べるとまだまだ少ないと思うんです。この店が写真を好きになる足がかりになればいいと思いながら続けています」

■おすすめの3冊

ブックカフェ65-2

「地球の素晴らしい樹木たち―巨樹・奇樹・神木」(写真・文/トマス・バケナム)
イギリスの歴史家が、地球上に散らばる素晴らしい樹木を求めて探検し、まとめた一冊。「世界の巨木の写真がたくさん載っているのですが、日本ではなかなか見られないスケールの木もあり、生命力を感じることができます」

「七彩夢幻」(写真/藤原新也)
パルコのアート・ディレクター、石岡瑛子が当時の気鋭写真家だった藤原新也を起用してインドとモロッコを舞台に制作した一連の広告シリーズ「ああ原点」の写真をまとめたもの。「藤原さんの初期の作品で、藤原さんの原点が感じられる一冊です」

「SWEET LIFE 日本版」(写真/エド・ヴァン・デル・エルスケン)
ストリートフォトの先駆者と呼ばれる[吉川1]エルスケンが妻と共に世界旅行をし、その旅先で撮った写真の数々が収録されている。「各国語版があるのですが、これは東京写真専門学院(現・日本写真芸術専門学校)から刊行された貴重なものです。エルスケンが撮った60年代の日本の写真も見ることができます」

(写真 山本倫子)

    ◇

Photo book cafe boats(閉店)
東京都杉並区上荻2-17-10

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PROFILE

吉川明子

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体に週刊朝日、アサヒカメラ(「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、婦人公論、BRUTUS、mi-molletなど。
https://www.instagram.com/a_yoshikawa0227/
https://note.mu/akikoyoshikawa

<64>壁一面にアート本 理系店主が腕を振るう「街の食堂」

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