このパンがすごい!

濃厚×濃厚 国産小麦とミルククリームのハーモニー/ペシュ

ミルクフランス


ミルクフランス

ペシュ(愛知)

 全国どこに行ってもおいしい店が見つかる。豊橋に行ったときもそうだ。ネットを見たり、訪れたパン屋さんにおすすめの店を訊いたり。そうして、住宅街の中にたどりついたのがペシュだった。
 朝倉川のほとりにある、木と鉄を大胆に組み合わせたおしゃれな店舗。レジ横に、カゴに入れてどっさりと置かれていたのがミルクフランス。この店の名物商品だという。
 かりかりと心地よく割れる皮。その乾きに染み込むようにミルククリームがちゅるちゅる溶ける。ねっとりと乳っぽい風味や酸味が、鼻腔まで立ち上り、くすぐりまくる。「地元・豊橋の中央製乳の無塩バターと精製していない素糖を使っています」と桃崎健次郎シェフ。そんなクリームの生々しさに拮抗するのは、麦の風味も重厚なソフトフランス生地。通常、ミルクフランスといえば、かりかり軽やかなパンを作る。ペシュのは逆に、北海道産「春よ恋」の濃い部分や十勝産の石臼挽き粉などを使い、小麦の風味がしっかりとして奥深い。濃厚さ+濃厚さのめくるめく螺旋階段をくるくると上って天国へと近づいていく。あとあとまで舌にまとわる旨味もやみつきパワーを召喚し、一本があっという間である。

チョコミルクフランス


チョコミルクフランス


チョコミルクフランスを開いたところ


チョコミルクフランスを開いたところ

 もう一種、チョコチップを生地に入れたチョコミルクフランスもあった。こちらも、皮のかりかりさくさくが圧倒的で、中身はしっとりとクリームに寄り添う。麦の香ばしさが、カカオの風味、ほろ苦さをいよいよ強調、それをミルククリームのミルキーさ、甘さが癒して、うっとりする時が過ぎる。
 ミルクフランスもまた、素材を重視した作り方をすれば新たなおいしさが生まれる。オープンの2年後、桃崎シェフはそれまで使っていたパン酵母(イースト)、外国産小麦をやめた。以来15年、すべてのアイテムをホシノ天然酵母や自家培養種と国産小麦、国産材料(一部オーガニック)で作る。

ショコラクランチ


ショコラクランチ

 ショコラクランチも、甘いパンではあるが素材感を出した例。まるでアーモンドのアルマジロだ。細身に焼いて、まわりをたくさんのアーモンドスライスで覆っている。かりかりが止まらない。ナッツからチョコへ、そして焼き込んだ生地へ。香ばしさとかりかりが連鎖する。スナック的なおいしさの中にも深みがあるのは、素材のよさゆえにちがいない。

カンパーニュ


カンパーニュ

 カンパーニュはまさに北海道産小麦のおいしさがダイレクトに表現されていた。立ちのぼる酸味と小麦のふすま(麦の皮の部分)の風味があいまって、あまりのまろやかさに酔いそうになる。わずかな弾力とともにふさふさと舌を迎え入れる中身。いい酸味がある。それは甘さを引き出し、やがては旨味へと変わり、芳香を鼻腔へと豊かに送り込むのだから。「酸味が出すぎないように、当日の朝に作っています。自家製の発酵種を、ライ麦から作ったもの、小麦全粒粉で作ったものと2種類使っています」。まろやかで芳醇な種の香りがしていたのは、そういう訳だった。

ペシュの近く朝倉川の眺め


ペシュの近く朝倉川の眺め

 朝倉川のほとりに座ってパンを食べた。水と新緑が織りなすうつくしい風景。魚を釣る人もいた。都市の中ではあるけれど自然が残るうつくしい場所だった。

店内風景


店内風景

外観


外観

■ペシュ
愛知県豊橋市南牛川1-14-15
0532-66-5700
10:00~18:00
月曜、日曜休み

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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