ワインとごはんの方程式

<18>辣子鶏(ラーズージー)、赤いから揚げと甘めの白ワイン

  

から揚げをたっぷりの唐辛子で炒めた辣子鶏(ラーズージー)。レシピは記事の最後に

身近な食材、鶏肉シリーズ第2弾は、定番のから揚げ……と思ったら、なんとたっぷりの唐辛子でそれを炒めてしまうという、大胆にもおいしそうな中華料理の登場です。しかも、そこに合わせるのがビールではないとしたら、いったいどんなワインを……?

   ◇

明日香 リカちゃん、鶏のから揚げは好き?

リカ 大好きです。テーブルの上にあると、ついつい手が伸びちゃいます。

明日香 そうよね(笑)。ふつうのから揚げももちろんおいしいけど、実は20年くらい前に上海ですごいから揚げに出会って、びっくりしたことがあります。日本ではあんまりなじみがない食べ方なんですが……。

リカ へえ! どんなお料理ですか?

明日香 「辣子鶏(ラーズージー)」といって、たっぷりの唐辛子で鶏のから揚げを炒めたお料理です。上海では直径50センチくらいありそうな大皿で出てくるのですが、それがものすごくおいしいの。唐辛子が入っているのに、切っていないのでそれほど辛くないんです。今回はそれを「西麻布 みかづき」の井浦さんに、家庭用にアレンジして作ってもらいました。(レシピは文末)

リカ うわあ……さっそく香ばしい香りが!

(料理が出てくる)

明日香 ヒューヒュー!!

リカ まっ赤!! 唐辛子の山じゃないですか! これ、見ているだけでテンション上がりますね。

明日香 さあ、じゃあ熱いうちにパクッといきましょう。

見た目ほど辛くない? 合わせるのは“アスティ県のマスカット”

リカ いただきまーす。(パクッ……)ひゃあ、最高っ! 唐辛子の香りを身にまとったから揚げというか……見た目ほど辛くないです。

明日香 そうなの。唐辛子の風味が付くだけなんですよ。なかなか食べたことない味わいでしょう? カリカリの揚げ具合もいいですね。

リカ こうなると、なんだかお酒が欲しくなります……!

明日香 はい、その一声待ってました!(ワインを出す)今回このから揚げに合わせるのはこちら、「Ribota Moscato d’Asti 2015 / Boeri(リボータ モスカート・ダスティ / ボエリ)」です。イタリア北部、ピエモンテ州のアスティ県で造られている微発泡の白ワインで、“モスカート・ビアンコ”という品種を使っています。さあ、飲んでみて。

  

合わせるのは、イタリア・ピエモンテ州の微発泡の白ワイン

リカ (クンクン……)うわあ、これ、香りが完全にマスカット!

明日香 でしょう? Moscato(モスカート)は“マスカット”のことで、D’Astiというのは、“アスティ県の”ということ。つまり、“アスティ県のマスカット”という意味のワインなんです。最初はほのかに甘さを感じますが、北部の寒冷地で造られているため酸味もしっかり入っていて、しかも微発泡なのでフィニッシュでぐっと上げてくれます。

リカ (ゴクッ……)うわあ、本当だ。甘みがあって飲みやすい。でも、たしかに後味がすっきりしていますね。甘いものが苦手な人も大丈夫そう。

明日香 半甘口なのにキレがいいから、私も大好きなんです。これからの季節、外でゴクゴク飲むのに最高ですよ。泡が苦手な人も、これはやさしい微発泡なので好きになってくれるはず。日本では半甘口のワインってあまり飲まないと思いますが、実はイタリアって甘口から辛口まで、発泡から微発泡まで実にいろいろなタイプのワインが造られていて、みなさん幅広く楽しんでいます。

リカ では、さっそくワインと辣子鶏を合わせてみます……。(パクッ)ん、これは……! 甘さと辛さが口の中でいい具合に混ぜ合わさり、リセットされるような?

明日香 そうなの。から揚げのピリ辛感をワインの甘みが中和してくれるんです。しかも、唐辛子を炒めた香ばしさを微発泡の泡がアゲてくれます

リカ 危険なマリアージュですね……ワインを飲むと辛さが落ちついて、そうなると次をまた食べたくなり……止まりません。

“辛いものには、甘いものをぶつける”という法則

明日香 中華料理には、基本的に紹興酒を合わせることが多いと思うんですが、辛い中華には甘めのワインがすごくよく合います

リカ そういえば、以前チンジャオロースにランブルスコを合わせたことがありましたよね?

明日香 あれは牛肉だったから赤の発泡ワインを選んだんです。今回は鶏肉で、かつ唐辛子の辛さと香ばしさがあるので、白ワインで半甘口のものを選びました。口の中で甘さと辛さがうまく調和され、プラスマイナス・ゼロに持っていった上で、最後に泡で上げるんです。

  

辛い中華には甘めのワインがすごくよく合う。レモンにつけてさっぱりと食べてもおいしい

リカ 相反する味だからこそ、うまくまとまるんですね。“辛いものには、甘いものをぶつける”という法則は、いろいろと応用できそうですね。

明日香 そうなの。から揚げにレモンをつけて口の中をさっぱりさせてもおいしいし、パクチーと一緒に食べるのもおすすめです。

リカ うーん、料理もワインも進みすぎてたいへん……。ふだん甘めのワインはあまり飲んできませんでしたが、辛いものを食べるときには、積極的に合わせてみます!

■本日の方程式:“辛さと香ばしさ”の方程式
辣子鶏の唐辛子(辛さ、香ばしさ)+鶏肉のから揚げ(香ばしさ)
=モスカート・ダスティ(甘み、微発砲)

    ◇

■本日のレシピ:辣子鶏(ラーズージー)
[材料](2人分)
鶏もも肉・・・1枚
<A>
酒、しょうゆ・・・同量
ニンニク(すりおろし)・・・適量
ショウガ(すりおろし)・・・適量
片栗粉・・・適量
唐辛子(ホール)・・・いっぱい
七味・・・少々
ラー油・・・少々
花椒・・・ひとつかみ
パクチー・・・適量
レモン(お好み)・・・適量

[作り方]
1)鶏もも肉をAに10分ほど漬けてマリネにする。
2)1の鶏肉に片栗粉をまぶして揚げる。
3)中華鍋に唐辛子とラー油を入れ、ごくごく弱火で炒める。途中で花椒を入れる。
4)香りが立ってきたら揚げた鶏肉と七味、ラー油を入れて絡め、器に盛る。仕上げにパクチーを乗せ、お好みでレモン汁につけて食べてもおいしい。

※食後に残った唐辛子をフードプロセッサーにかけ、サラダ油と一緒に弱火で焦げないように煮れば、自家製「ラー油」にもなる。

<お料理協力 西麻布 みかづき

  

中華鍋にラー油と唐辛子を入れてごく弱火で炒め、花椒を加えます。あとで手作りのラー油にもできます

  

香りが立ってきたら、鶏のから揚げをからめる。唐辛子を切らないので、見た目ほどには辛くない

  

油を泡で洗い流しながら、パクチーやレモンと一緒にいくらでも食べられてしまう

■本日のワイン
Ribota Moscato d’Asti 2015 / Boeri
(リボータ モスカート・ダスティ / ボエリ)

  

Ribota Moscato d’Asti 2015 / Boeri(リボータ モスカート・ダスティ / ボエリ)

(構成・宇佐美里圭/写真・興村憲彦)

    ◇

連載「ワインとごはんの方程式」へ

連載「ワインのおはなし」へ

PROFILE

  • 宇佐美里圭

    1979年、東京都生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルー・クスコにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。ワールドミュージック誌、スペイン語通訳、女性誌、『週刊朝日』編集部を経て、『アサヒカメラ』編集部。料理研究家・行正り香さんの書籍を多数手がける。ラテン音楽、山、ワインが好き。

  • 杉山明日香

    東京生まれ 唐津育ち。理論物理学博士・ソムリエ
    有名進学予備校の数学講師として、主に東大進学クラスや医学部進学クラスを担当するかたわら、ワインスクール「ASUKA L’ecole du Vin」ではソムリエ資格試験対策講座を主宰する。またインポーターとしてシャンパーニュ・ワインの輸入業や、西麻布のワインバー&レストラン「ゴブリン」、パリの和食店「ENYAA」のプロデュースなど、ワイン関連の仕事も精力的に行っている。
    著書に『ワインの授業 フランス編』(イースト・プレス)、『受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座』(リトルモア)、『おいしいワインの選び方』(イースト・プレス)
    ■撮影協力:ゴブリン

<17>九州人のソウルフード「博多の水炊き」といえば、泡+ピノ!

一覧へ戻る

<19>夏はシチリア! ナスのラザニア風と、元気が出る赤ワイン

RECOMMENDおすすめの記事