このパンがすごい!

地元愛を結集、必殺技「中とろ」でヒット商品連発/パン工房ぐるぐる

地元愛を結集、必殺技「中とろ」でヒット商品連発/パン工房ぐるぐる

常陸の全粒粉 半熟卵風カレーパン

■パン工房ぐるぐる ひたちなか店(茨城県)

写真特集 身もだえするような「中とろ」パンはこちら

 ヒットの秘密は「中(なか)とろ」である。外側はかりかりとか、もちもちとかして、噛(か)むととろっとなにか出てくる。この二段ロケットに人間はひじょうに弱い。その定説を体現する繁盛店が茨城のパン工房ぐるぐるである。

 たとえば、「常陸の全粒粉 半熟卵風カレーパン」。噛めば、半熟卵がどろりとあふれだすプチパニック状態。カレーに生卵をかけるときと同じく、甘さでくるんで辛さがまったりマイルドになり、卵かけごはん的な快楽で口いっぱいとなる。そこへじわじわと、コクとぴりぴり感が高まってきて、口の中をすーすーずきんずきんとさせる。表面かりかり、その下もっちりな分厚いパン。全粒粉入りで風味も腹持ちもアップさせて、男子をよろこばせる。

 この全粒粉、栗原淳平シェフの弟さんが営む栗原農園で作られたもの。40%も配合しているのに、もさもさ感がまるでない。

 「全粒粉を湯種(お湯で粉をこねてデンプンをα化させる)にしているので、つぶつぶ感やえぐみがなくなります」
 兄と弟の力を結集させた、地元愛・兄弟愛にあふれた逸品なのだ。

地元愛を結集、必殺技「中とろ」でヒット商品連発/パン工房ぐるぐる

奥久慈卵のとろ~りクリームパン断面

 つづいての中とろウェポンは、「奥久慈卵のとろ~りクリームパン」。TVの全国放送に登場、かつて1日3000個以上売り上げたこともある大ヒット商品(2店舗になる前の1店舗の時代)。

 身もだえするようなとろとろぶりよ。隙間なくたっぷり詰まったクリーム。洪水のようにあふれだして、甘さで舌を包み、やがては喉(のど)へ流れくだるのをごくごくと飲む。卵風味がすっきり、生クリームが勝った、みずみずしいミルキーさ。パンも甘さが控えめでクリームを邪魔しない。クリームもパンもとろけ、香ばしさとクリーミーさがひとつに合わさったとき、別ステージの甘さへ高まる。

 「クリームは後入れ注入しています。『とろ~り』という商品名はよくありますけど、本当にとろ~りとしているパンを作りたくて」

 後入れゆえに、余計に熱も加わらず、包むことを前提としないので、とろとろなクリームをたっぷりと入れられるわけだ。

地元愛を結集、必殺技「中とろ」でヒット商品連発/パン工房ぐるぐる

究極のメロンパン

 中とろ三銃士の最後は、「究極のメロンパン」。ビスケット生地はたたみいわしのようなフラジールさでもろくも崩れ去る。中身はあまりのふわふわさゆえに、噛むと一気にひしゃげてしまう。そのとき、しょっぱめのバターが甘く流れだし、ビスケットの甘さと合流。愉楽に満ちた甘じょっぱワールドが姿を現す。

 衝撃のビスケットぱりぱりと甘じょっぱ味はどのように生まれるのか。

 「油脂分をすごく多くし、わざとどろっとさせて焼いています。ただ甘いだけだと飽きちゃうので、有塩バターを入れてしょっぱさを加えて癖になる味にしています」

 ヒット商品連発のもうひとつの理由は、地元食材の使用。茨城県産の奥久慈卵はクリームパンに使用される。あるいは、坂東市ソメノグリーンファーム産のゆめかおりが使われる茨城食パン。山食の醍醐味(だいごみ)がある。じかに熱が当たる山の部分を焦げる寸前まで焼き切っているため、香ばしさが濃厚でめまいがする。茨城県産ゆめかおりを完全に引き出すとこんな香りがするのだ。中身からミルキーな風味を吸い込み、ほどよい甘さが舌にのる。両者とも最低限で小麦味を邪魔しない。ふわふわだが芯があり、歯が着地する瞬間、ぷりっと噛みごたえを発揮する。

店内風景

店内風景

 店内では、実家である栗原農園の野菜やブルーベリーも売られ、サンドイッチにも使用されている。野菜たっぷりパストラミとオニオンは、その名の通り、ハムと新鮮な葉野菜がすばらしい出会いを遂げている。

 「観光したときはその土地のものが食べたいですよね。『ぐるぐるに行けば茨城のものが食べられるぞ』って、県外の人がぐるぐる目指してきてもらえるようになれば、茨城のよさをアピールできる」

 地元の食材を使うことは、地域を活性化させ、人と人のつながりを作り、お客さんをよろこばせる。栗原シェフは、あれもこれも使いたいとアイデアがあふれ、とても楽しそうだ。活気はそのまま店の魅力につながっている。

外観

外観

■パン工房ぐるぐる ひたちなか店
茨城県ひたちなか市中根3174-6
029-219-8520
9:00~18:00(水曜休み)

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)
http://panlabo.jugem.jp/

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