花のない花屋

縁あって家族に 東北いわき市に住む義父母へ 

  

〈依頼人プロフィール〉
櫻山真梨子さん 33歳 女性
東京都在住
会社員

    ◇

私は子どもの頃、毎年夏になると家族で福島県いわき市に海水浴に出かけていました。会社員だった父が同僚と企画した家族行事で、私は小学校1年生の頃から中学1年生になるまで、毎年参加していました。多いときは11家族くらい来たこともあり、本当にいつもにぎやか。朝から日が暮れるまで子ども同士ビーチで遊んでいて、楽しい思い出ばかりです。その頃から、「いつかこの海を見に戻ってこよう」と強く思っていました。

その願いが通じたのか、縁とは不思議なもので、3年前に結婚した主人の実家がいわき市にありました。それを知ったときは本当に驚きました。2人で夏のいわきの海を見に行ったこともあり、「またここに戻ってくることができた!」と、とても感動しました。ちょうど東日本大震災の1年前のことでした。

主人の実家は海から離れていたので東日本大震災による津波の被害はありませんでしたが、ライフラインの停止などで、義父母は大変な日々を過ごしました。私にとっても、大切な土地が大震災と津波によって破壊され、大きなショックでした。今も帰省するたび、工事が進む市内の様子を目にすると心が痛みます。

義父母はとてもやさしく、私たちが帰省するたびに温泉に連れて行ってくださって、東北の魅力を教えてくれます。一緒にお出かけするたびに「東北ってすてきだな」「家族っていいな」と思います。

まだまだ頼りない私たち夫婦ですが、いつもお世話になっている義父母へ日頃の感謝を込めて花束を贈りたいです。

私たちは東京に住んでいますが、婚姻届は大好きないわき市で出しました。その日はゴールデンウィークの初日で、気持ちよく晴れ渡り、空も海も真っ青だったのが印象に残っています。東北の青い海と空、白い雲、そして復興へ向けた強い心をお花で表現していただけるとうれしいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

今回は、まさにいわきの海のイメージです。この時期の青い花といえば、デルフィニウム。真っ青なデルフィニウムと、薄いブルーも混ざったマリンブルーという2種類を使いました。

デルフィニウムは背が高く、穂状に花をたくさんつけるので、少し丈を切ったものを中心に挿し、切り落とした花をまわりに挿していきました。アクセントとしてところどころにラグラスを加えています。

リーフワークはハランの“ウェーブ”折りです。これは文字通り波をイメージしました。

夏の訪れもすぐそこ。これからもいわきの海でご家族の思い出が紡がれていくといいですね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」まとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

縁あって家族に 東北いわき市に住む義父母へ 

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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